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Bernadette
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九十九神のキセルと、ふつうの男子高校生ナナオのよく分からない日常か何か


・キセル
ナナオの曾祖父が愛用していた煙管の九十九神。九十九神としてはまだまだ若い。
人の姿をとることが出来るが、その姿はナナオや一部の人物にしか見えない。着物+羽織+草履の和装だが、これはナナオの曾祖父の晩年の格好がモデル。外見は普通の青年。
よく食べ、よく遊ぶ。気付いたらナナオのおやつが犠牲になっている。おせんべいポリポリ食べながら居間に横になっているのを発見されて、ナナオに怒られる。しかし気にしない。
性格は至って良識人。ナナオの曾祖父に大切にされてきた分愛情深く、ナナオにも親のように、兄のように接する。口は少し悪いが善人。


・ナナオ(真木七生)
男子高校生。中学校で陸上部をしていたので身長は高め、かつ筋肉がついた痩せ型。高校では帰宅部だが、体型はキープ出来ている。
幼少時は体が弱かったが今では健康優良児。現在両親が不在のため、家事に悪戦苦闘している。一応自炊してはいる。
ふとした瞬間にどこかにふらりと行きたくなる。特に休日は、本当にふらりとバスに乗り、電車に乗り、思いも寄らないところまで行く。よく幼馴染みに心配されるが、きちんと自力で帰ってくる。キセルもついてくる。
真木家は物が集まりやすい家で、いろんな物がいろんなところからやってきたり、あるいは出て行ったりする。キセルになんやかや言われつつその世話をしている。
行儀が良い。背筋を伸ばして正座してご飯を食べる。洗濯物や布団はきっちり畳む。おやつも歩きながら、立ちながら食べることはない。なのでキセルがお菓子を寝そべって食べているのを見ると怒る。


・幼馴染み(名前未定)
ナナオの幼馴染み。同い年、かつ同じ高校。クラスは不明。
少女。よくある幼馴染みにしようかと考えているが、どうなるかは不明。


・カクリヨさん(名前未定)
あるいはユウセイさん。和服その二。髪が長い男性。涼しげな目をした美丈夫。ただしあまり存在感が無く、街中を歩いていてもあまり気付かない。ナナオもよく、後ろから声を掛けられてびっくりする。
街外れの山中に居を構えているが、滅多なことでは人が入らないどころか、そこに屋敷があるのだと言うこと自体認識されていない。曰く、カクリヨさんが招いた人、あるいはカクリヨさんに用のある人にしか認識出来ないのだとか。それ以外は足を踏み入れたとしても、絶対にカクリヨさんの屋敷には辿り着かない。
いわゆる呪術師。病気の治癒は勿論人を呪うことも出来る。キセルが見える。知識を幅広く持っている。
常に和服だが、時々街に降りてきてはハンバーガーを食べる。でも食べ慣れてないので大変なことになる。意味が分からない。


・カクリヨさんの弟子、あるいは娘(名前未定)
呪術師カクリヨさんの弟子にして娘。ただし血は繋がっていない。昔、カクリヨさんに拾われたらしい。
呪術師の才能がある。まだ中学生くらいだが、妙に大人びている。洋服も着るが、屋敷の中に居る時はたいてい作務衣。髪が長い。
カクリヨさんを「父さん」と呼ぶ。とても仲の良い疑似親子。ちなみに学校には通っていないし通う必要もないと思っているが、セーラー服は着てみたい。

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 レイチェルと呼ぶ声に振り向けば、若い執事が階段を指しているのが見えた。

「階段の掃除は?」
「まだです。お洗濯が終わったらと思って」
「早めにお願いしますね。今日は旦那様のご友人が見えられますから」

 白い手袋の先で袖口をいじりながら、サイモンはこともなげに告げた。それにレイチェルがうぇっと呟いたのはきっと、気付かれなかったと思いたい。とはいえ、気付いていたところで執事はどこ吹く風で彼女の目の前に仕事を積み上げていくのだからあまり意味はないだろう。
 サイモンは執事だ。執事としてはまだ若いが、この屋敷の主人からの信頼は厚い。とはいえ、主人はサイモンだけではなく、メイドのレイチェルも、庭師のジャックも、料理人のアシュリーも信用しているのだが。何せこの屋敷には主人を含め五人しかいない。
 たった一人のメイドであるレイチェルの仕事は多い。しかし文句はない。乞食同然だった彼女がここまで育ったのも、この屋敷の主人と使用人達がメイドとして雇ってくれたからに他ならない。おかげで忙しいとはいえ働いた分の給金は貰え、衣食住にも困らないのだから、人の一生は何が起こるか分からない。
 サイモンの左手が、右袖をいじる。

「サイモン?」
「はい」
「右袖のカフスが。とれそうなんですね」

 彼らしくない挙動に目を懲らせば、燕尾服のカフスが緩んでいたのだった。指摘されて彼は困ったように少しだけ眉を顰めた。

「さっき気付いたんです。直そうと思ったのですが忙しくて」
「それなら、私が直しましょうか」

 抱えていた洗濯物の籠を抱え直しつつ問えば、サイモンはしばし考えるように沈黙した。その間もやはり彼の手はカフスをいじっている。いつか落ちるのではないかとレイチェルは内心ハラハラしていたが、彼はそんなことはまったく考えてもいないのだろう。真っ白な手袋に包まれた指先は止まらない。
 そしてやはり、レイチェルの危惧したようにカフスが音を立てて床を転がった。カフスはサイモンの足下からレイチェルの足下までころころと転がり、レイチェルの使い古したブーツの爪先に当たって止まった。それを拾おうとしたところで、サイモンの手が先に伸びてレイチェルの動きを止める。
 カフスを拾い上げた彼はふう、と小さく息をつくと、カフスを洗濯籠の中に落とした。

「あっ」
「では、お願い出来ますか。干して、階段を掃除した後で構いませんので」

 言いつつ燕尾服を脱ぎそれを更に洗濯籠の上に重ねたので、必然レイチェルの腕に燕尾服一着分の重さが増す。メイドは力仕事も多いとはいえ、なんとも失礼なヤツだと嫌味の一つも言ってやろうかと思ったが、言ったら更に仕事を増やされるか嫌味で返されるかのどちらかだと気付いて止めた。ここで働き始めて七年、この執事との付き合いも七年にあたるが、未だ彼に口で勝てた事はない。
 シャツにベスト姿になったサイモンは、これで終わったとばかりにさっさと階段に足をかけた。レイチェルもまた仕事に戻ろうかと洗濯籠に視線を落とす。早く終わらせようと背を向けたところで、

「ああ、そうでした、レイチェル」
「はい?」
「今日の昼食にはタルトがつくそうですよ。アシュリーが良い果物が入ったと言っていました」
「ほんとですか?」

 慌てて振り向けば、サイモンは軽く肩を竦めて他には何も言わなかった。そして何事もなかったかのように二階へ行ってしまう。だがその背に嫌味をぶつけてやろうとはもう思わなかった。

「じゃあサイモン、カフスつけてあげますから、タルトあたしにくださいね!」

 叫ばず、けれど彼に届くぎりぎりの声量で訴えれば、やはり彼は答えなかった。
 差し出された列車の切符を片手に頬を膨らませるフロウに、シモンはあからさまに面倒そうな顔をした、気がした。
「わたし、これでも25歳なのに」
「どっからどう見ても、10歳くらいのガキだろ」
 はっきりと言い切れないのは、彼が自分の顔の大部分を、包帯を巻いて隠しているからだ。指名手配されているわけでも、顔面が正視に耐えられないからでもない。ただ彼の事情により、目と口元以外ほとんどその人相は分からない。だがそれを補ってあまりあるほど、彼の声や言葉は率直だ。返ってきた返事に彼が面倒くさがっているのが読みとれたフロウは改めて男を振り仰ぐ。
 頭二つ分は違うだろう、長身のシモンは眠たげな青い垂れ目をしている。短く切った茶髪が適当に巻いた包帯の隙間から飛び跳ねていた。鍛え上げた男の体はフロウと並ぶといっそうそれが際だつ。元々軍人だったと言われて納得したのはそう遠くない過去のことだ。気を抜くと飲み込まれそうだと思ってしまうのは、小柄なフロウにとっては仕方ないことだろう。
 彼から渡された、子供用の乗車券を握りしめる。丸みを帯びた子供の手は柔らかく、とがった切符の先端が皮膚を刺した。視界の端でミルクティー色の巻き毛が揺れる。鬱陶しいそれを適当に手で払ったところで駅に汽笛が響いた。
「ほら、行くぞ」
 今にもため息をつきそうな勢いで、シモンはフロウの足下においてあった二人分の荷物を抱え上げた。重そうなトランクも、彼の手に掛かればまるでおもちゃのようだ。歩き始めた彼に二歩遅れて続けば、シモンはちらりと振り返り、
「なんならオマエも抱えた方が良いか?」
 と至極まじめな口調で尋ねてきたので、
「結構です!」
 とフロウは背中の両翼を不機嫌そうに鳴らした。


 羽化という現象は、五歳から十五歳までの子供に訪れる神の祝福だという。
 遙か昔から存在したこの現象はその名の通り、背中から真っ白な両翼が生える。それがまるで天使のようだということで、羽化が起きた子供たちは総じて「天使」と呼ばれた。
 フロウもまた、「天使」の一人だった。
 フロウとシモン二人きりのコンパートメントの中で、シモンはてきぱきと荷物を収め席についた。少し逡巡してフロウは、彼の隣ではなく目の前に腰掛けた。さして広くもない座席だが小柄なフロウには十分だ。しかし大柄なシモンには少しばかり足りないらしい、足が所在なさげに組まれていた。
 羽織っていたショールを折りたたみ、膝の上に置く。白い両翼は飾りのようなもので、決して空を飛ぶことはできない、いわば飾り物だ。フロウにとってこの両翼はあまり良い物ではない。おかげで仰向けで寝ることはできないし、体のバランスもとりにくい、更に濡れれば乾くまで時間がかかるのだ。羽化してから10年以上経つが、いまだにフロウは自分の両翼と上手く共存できていない。
 もぞもぞと座り心地を試行錯誤していると、シモンは小さくあくびをしたようだった。
「眠いの?」
「まあな」
 青色の目が見つめ返してくる。
「オマエは眠くないのか」
「あんまり。昨日の夜は早く寝たもの」
「よく寝る子供はよく育つらしいぞ」
「わたしは子供じゃないって言ってるじゃない」
 今まで何度も交わしてきたやりとりに、シモンはあくびで答えた。
 とはいえ、シモンがフロウを子供扱いすることを仕方ないと半分は諦めている。羽化した子供はその時の外見以上に成長しない。故にフロウも、羽化した当時の外見年齢のまま年を重ねている。外見は10歳程度の子供だが、中身は25歳というアンバランスな関係になってしまっているのだ。
 保護者のシモンにしてみれば料金が子供分で済んで便利らしいが、中身がきちんとした大人であるフロウからしてみれば複雑なことこの上ない。
「それに、これ以上どう頑張っても身長は伸びないと思う」
「不便だな、天使っていうのも」
「そう、不便なの」
 パンの入った紙袋を漁りながら、フロウは大きくため息をついた。いまいち座り心地の悪い座席と収まりの悪い両翼に辟易する。背中に重荷のないシモンは、我関せずと瓶入りの炭酸水を開けていた。
ねーmzk_mik、人生に疲れたなんでも屋とその人を嫌う人物とのファンタジー書いてー。



 タキに接する上で禁じられていることは三つある。
 一つ。彼を無理に起こさないこと。
 一つ。彼にむやみに触れないこと。
 一つ。彼の過去を詮索しないこと。

 ルカが朝の六時に起きて夜の十二時に寝るという正確な生活リズムを刻んでいるのとは裏腹に、彼女の雇い主であるタキの生活は不規則だ。故に彼と彼女が顔を合わせて食事を摂るということは滅多にない。
 そもそも、彼に雇われた世話係と言う名のメイドであるルカが、主人と共に食事を摂ること自体、ありえないことではあるのだが。
 それが、どう間違ったか、今彼女の目の前に並んでいるのは湯気の上がる温かなスープと焼きたてのパンにストロベリージャム、新鮮な野菜のサラダ、柔らかなスクランブルエッグの皿だった。そして全く同じ物がテーブルの対面にも並び、そこには銀色の髪の毛を寝癖で乱した主人が座っていた。
 躊躇いつつも椅子を引いて座れば、タキは無言のままルカを見、そしてフォークを手に取った。つられてルカもフォークを持ち、彼がスクランブルエッグを掬ったのを見届けてからそっとトマトを突き刺した。瑞々しいトマトの赤い皮が破れ、中の液体がいくらか溢れる。口に放り込み咀嚼を始めたところで、これは主人に合わせて食事を終わらせるべきか、それとも早めに食べ終わるべきか、考えを巡らせていた。
 勿論タキは一切そんなことは考えていないだろう。そもそも考える側ではないのだから仕方ない。ぬ、と手が差し出された。
「……はい?」
「ジャム」
「イチゴですが」
「……」
「……どうぞ」
 会話が上手く続かないのはいつものことだ。差し出された手にそっとジャムを載せた拍子に、手のひらに指が当たった。むやみに触れてはいけない、という言葉を思い出したが、これは不可抗力だろう、と誰にともなく言い訳をした。タキは蓋を開け、ストロベリージャムをパンに塗りたくっていた。
 その塗り方が妙に子供のようだったが、しかし彼はどこからどう見ても立派な大人だ。ライムグリーンの鮮やかな目が細くなる。一体どうしたのか、フォークにレタスを刺したまま見返すとふい、と視線を逸らされた。逸らされた、というよりは、壁に掛かったカレンダーに視線を移した、と言った方が正しいだろう。ぺろりと彼の舌が唇の端を嘗めた。やはり、どこか子供のような仕草だった。
 カレンダーには数日前から書き込まれた予定が並んでいた。赤いペンで書かれたことには、「魔女、来る」の一言だけだ。それでタキが分かっているのならばルカに問題はない。だがそれで済まないのだからこの仕事は憂鬱だ。
「茶の用意」
「はい。紅茶でよろしいですか」
「なんでも良いんじゃねえの」
 それでは困るのだ、という言葉を飲み込み、代わりにスープをひとすくい、口にする。
「どうせ知り合いだ。何を出しても文句は言わないだろうよ」
「……かしこまりました」
 一つ。彼の過去を詮索しないこと。頭の中で約束がぐるぐると回っている。詮索したいとは思わないが、もしも出来たならば会話がもっと続くのだろうか、と考えた。例えば、「魔女とは何年ほどの付き合いなのですか」などと聞くことが出来れば。しかしそれは詮索の類に入ってしまうのだろう、とルカはやはり、口を閉じるしかない。
 では朝食を終えたら準備をしよう、と動かす手を早めた瞬間だった。
「おい、伏せろ」
「え」
 目を丸くしたルカへ主人が鼻を鳴らす。慌てて首をかくん、と下げた、その頭上をひゅん、と何かが飛んでいった音がした。一気に背筋が凍った。よっぽど振り返りたかったが、しかしまだ頭を上げて良いとは許しが出ていなかった。おそるおそるタキを盗み見ると、彼の鮮やかな目がじっとルカの背後を見つめていた。
「こんにちは、便利屋さん。相変わらず辛気くさい顔をしていらっしゃるのね」
「朝から煩いヤツだな」
 聞き覚えのない女性の声に、タキはいつもと変わらない調子で答えた。そろそろ顔を上げても良いだろうかと少し頭を持ち上げたところで、また頭上を嫌な音が走っていった。
「フォークにスプーンに、ずいぶんと手癖の悪いこと」
「まあな。嫌ならさっさと回れ右。帰れ」
「嫌な人。だから嫌いなのよ」
「安心しろ、俺も大嫌いだ」
「さっさと死んでしまったらよろしいのに」
「それが出来れば苦労していない」
 頭上で交わされる会話に冷や汗をかきながら、ルカはただ顔を伏せていた。冷め始めた朝食を目の前に殺気だった言葉が延々と投げては投げ返され、間に挟まれたルカはひどくいたたまれない気分だった。タキの手が手持ち無沙汰に揺れている。持っていたフォークもナイフも、女性に向けて投げてしまったが故にそこにはない。次に狙われるのはストロベリージャムの瓶だろうかと思い至り、目の前が眩んだ。掃除や片付けをするメイドの身にもなって欲しい。
「で、わざわざ大嫌いななんでも屋のところにやってきた用件はなんだ。さっさとしろ。さっさとしないと」
 するりと彼の手が伸びたのは、予想通りストロベリージャムの瓶だった。
 喧嘩だったらよそでやれ、という言葉を、やはりルカは飲み込んだ。

 焼きたてのパンを目の前に、指先でそれを千切った。熱く硬い表面が裂け、中の生地がふわりと白い湯気と芳香をあげる。皿に盛った赤いストロベリージャムを掬い口に放り込めば、酸味と甘みとパンの香ばしい香りが口いっぱいに広がった。ゆっくりとパンの欠片を噛みしめ、飲み込む。


「パンはイエス・キリストの体らしいぞ」

 棒読みめいた言い方で、向かいの席から声がかかる。千切る手を一瞬止めたが、気にせずまた再開した。

「命の象徴らしい。それを食べる気分はどうだ」

 目の前の男の顔は見なかった。声の調子は平坦だったがどんな表情をしているのか容易に想像できた。それに抗うように表情を殺し、食事を続ける。
 視界の隅に映ったのは、一切手のつけられていない朝食一セットだった。冷めていく焼きたてのパンも、スクランブルエッグも、新鮮な野菜も、男は一切、口にしようとしない。
 心の中で笑う。それを食べる気分はどうだと聞く、アンタはいったいどうなのか。命の象徴であるものは湯気を立て食欲を誘う。それらすべてを切り捨てる、目の前の男は。
 気づけば、千切るパンはなくなっていた。


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