ひらめきで作られた物は無難な物よりも最悪に傾いた物の方が多いと黒崎はよく思う。そう思うようになった原因は、その黒崎の前で苦笑いを浮かべていた。
笑ってる場合じゃないだろ、と沈黙を断ち切るように呟いた。
「なにこれ」
「食べ物」
「食べ物ですらねえ」
白い皿に盛られた焼きそばらしき物体を指さす。タカが気まずげに視線を逸らした。
「なにこれ」
もう一度尋ねる。
「食べ物のはず」
揺らぎが生じてきた。
「食べ物ですらねえ」
「食べ物のはずなんだよ」
「まったくそう見えないんだが」
「眼鏡買ったら」
「まずはお前が買った方良いよ」
焼きそばのソースの匂いに混じって魚の生臭いような美味しいような微妙な匂いが漂ってくる。顔を寄せて焼きそばらしき物体を観察すると、煮干しの頭らしき物が見えた。
何かを言う気力が無くなり睨みつけると、タカは慌てたように弁解を始めた。
「食べる物と食べる物を混ぜたんだから食べ物のはずなんだ。カクテルだってそうだろ」
「カクテルとお前の思いつきの料理を一緒にするな」
「いや、大丈夫だって。大丈夫。見た目グロいけど食えるって」
「味の保証は」
「食えば分かる」
差し出された割り箸を無言で受け取り、二本に割る。黒崎に倣ってタカも割り箸を割った。しかし二人の手はそれ以上動かず、宙に浮いたままだった。
煮干し焼きそばは二人の目の前で、外見だけは美味しそうな湯気を放っている。
笑ってる場合じゃないだろ、と沈黙を断ち切るように呟いた。
「なにこれ」
「食べ物」
「食べ物ですらねえ」
白い皿に盛られた焼きそばらしき物体を指さす。タカが気まずげに視線を逸らした。
「なにこれ」
もう一度尋ねる。
「食べ物のはず」
揺らぎが生じてきた。
「食べ物ですらねえ」
「食べ物のはずなんだよ」
「まったくそう見えないんだが」
「眼鏡買ったら」
「まずはお前が買った方良いよ」
焼きそばのソースの匂いに混じって魚の生臭いような美味しいような微妙な匂いが漂ってくる。顔を寄せて焼きそばらしき物体を観察すると、煮干しの頭らしき物が見えた。
何かを言う気力が無くなり睨みつけると、タカは慌てたように弁解を始めた。
「食べる物と食べる物を混ぜたんだから食べ物のはずなんだ。カクテルだってそうだろ」
「カクテルとお前の思いつきの料理を一緒にするな」
「いや、大丈夫だって。大丈夫。見た目グロいけど食えるって」
「味の保証は」
「食えば分かる」
差し出された割り箸を無言で受け取り、二本に割る。黒崎に倣ってタカも割り箸を割った。しかし二人の手はそれ以上動かず、宙に浮いたままだった。
煮干し焼きそばは二人の目の前で、外見だけは美味しそうな湯気を放っている。
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