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Bernadette
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 こんな夢を見た。

 風船の紐を手に持っていたら、うっかり手を開いてしまった。赤い風船はふうわりふわりと空へと昇る。紐はあっという間に私の手の届かないところまで行ってしまった。
 大変だ。そう思った私は大慌てでぴょん、と飛び跳ねた。そうしたら、あっというまに風船を追い越して高い高い空へと昇ってしまった。
「おうい、どうしたんだいいったい」
 下から友人が、私に向かって叫んでいた。
「なんだか分からないよ。体が軽いんだ」
 最初は本当に、ぴょん、と跳んだだけだったのだ。だというのに私はどういう訳か、風船のようにふうわりふわりと未だ空へと昇り続けている。必死になって下に向かって叫ぶと、赤い風船が見えた。
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 「カラスアゲハ」とは蝶の名前であるらしい。昼を外で過ごすことの出来ないエティエンヌは当然のことながら、動く蝶を見たことがない。彼らが魔法で生み出した蝶は、彼らの想像と標本から得た情報から出来ている。エティエンヌの兄は昼の物をひどく愛している。彼のコレクションの中には蝶の標本が当然のごとく存在し、エティエンヌは以前、彼女の名前に興味を持って、その蝶を眺めたことがある。
 黒色の、大きな蝶だった。黒一色だと思っていた羽根は今にも発光しそうな鮮やかな青が散らばり、よく見ると赤色も少しだけ、まるで差し色のように存在していた。なるほど、と思った。その名を名乗る魔女は真っ黒な髪をさらさら伸ばして、明るい青色の虹彩を輝かせていた。そして艶やかな唇は果実のような赤色をしていた。
 確かに彼女は、カラスアゲハなのだろう。決して蝶ではないが、少なくともその色合いは、そう名乗るにふさわしいのだろう。


 そのカラスアゲハどういう訳か、夜になっても起き出さなかった。吸血鬼であるエティエンヌは他の吸血鬼達と同じように、一般的に言うところの昼夜逆転生活を送っている。日差しは彼らの肌を容赦なく焼き溶かす。
 だからといって同居している魔女は彼と同じ生活リズムを刻んでいる訳ではない。規則正しい訳ではないが、基本的には昼間に起きて夜中には眠る。故に同居していながらも、彼と彼女が一緒の時間を過ごすのは、実質夕方から夜中までだ。
 そのカラスアゲハが珍しく、夕方を過ぎ、普段は食事を摂る時間になっても起きていない。エティエンヌにとっての朝食は、魔女にとっての夕食に等しい。二人分の食事を作ろうとしたところで昼食を作った痕跡がないことに気付き、彼女の寝室を覗いてみたら、案の定眠っていた訳である。
 灯りをつけないまま寝台の横に立ち、エティエンヌはカラスアゲハの寝姿をまじまじと見た。寝相は悪くなく、今は横向きに丸まり、白いブランケットを腹にかけていた。長く伸びた黒髪はやはり白いシーツの上で散らばり、いくらかは彼女の顔にかかっている。呼吸は驚くほど静かで、まるで死んでいるようだ。いつもは色鮮やかな唇は、今は眠っているせいだろう、淡い色をしている。
 兄に頼んで見せてもらったあの蝶のようだった。美しいままその体を貫かれ、朽ちることを知らない標本の蝶は、今もなお兄の部屋のどこかでその羽を広げているのだろう。カラスアゲハも同じようなものだ。彼女が何年生きているかはエティエンヌも分からない。だが彼女は最も美しい時にその体の時間を止めた。展翅された蝶のように。
 「カラスアゲハ」とは蝶の名前であるらしい。そしてそれは彼女の本当の名ではない。
 彼女は自分の名を誰にも名乗らず、教えない。自分で決めたのか誰かが贈ったのかは分からないが、カラスアゲハという通り名は、彼女によく似合っている。そう思うのはエティエンヌが朽ちない蝶の標本しか知らないからかもしれない。
 本当に死んでいないか心配になり、エティエンヌは頬に触れた。低いが、確かに体温はあり、体は呼吸に合わせて静かに上下している。そっと彼女の顔にかかる髪の毛を払うと、長い睫毛が微かに揺れた。起きるだろうかと期待したが、カラスアゲハはついぞその青色の瞳を瞬かせることはなかった。
「……カラス」
 落胆しつつ、仕方なくその肩に手を置いて軽く揺さぶった。不明瞭な声を発したが、やはり起きない。こんなに寝起きの悪い人だったか、と首を傾げる。
「カラス、カラスアゲハ」
「……ん」
「起きてください、もう夜ですよ」
 更に強く揺さぶって、ようやく瞼が動いた。ぼんやり霞んだ青い目が頼りなく左右に動き、やがてエティエンヌに焦点を結ぶ。エティエンヌは子供を安心させるように優しく笑った。つられるようにカラスアゲハの唇が動き、笑みを形作る。
「おはよう、エティ。今日も良い天気かな」
「ええ、良い夜ですよ」
 言って、窓に掛けられたカーテンを勢いよく開けた。硝子窓から日差しは差し込まず、エティエンヌの肌を焼くことはない。代わりに白い月明かりが差し込んで、寝台までをしとやかに照らした。目をぱちくりとさせたカラスアゲハは伸びた黒髪を片手でまとめ、
「まったく、早くなかったね」
 とうそぶいた。
ファンタジー物が書きたい


・現代日本のはず
・でも妖怪とか悪魔とか魔女とかそういうよく分からん生き物が普通に存在する
・最初から世界観設定とか何もあったもんじゃない、そうであることが当然であるような口ぶりで話を進めたい
・もう現代日本じゃなくて良いじゃん
・どこかよく分からないけど普通に学校とかスーパーがあって買い物をして音楽を聴いてピアノを弾いて
・でも現代日本にすると好きな雰囲気が出ない
・魔女とか吸血鬼とか出すなら優雅な雰囲気にしたい
・日本にするとカタカナの名前が似合わんね
・んじゃもうそういうのまったく考えず、一つの街にしてみるとか
・人と人ではないものがたくさん住んでいる、広い街
・人種も種族もばらばら
・キャラクターを考えている内に別に日本じゃなくても良いと思えてきた
・じゃあファンタジーな街で、でも電気や水道は普通に通っていて、ヨーロッパのような、昔の建造物の中は近代的な物で溢れているイメージ
・冷蔵庫は是非あってほしい


・魔女と彼女の友人兼保護者兼同居人兼世話人兼使い魔の吸血鬼の話
・もう使い魔で良いじゃないか
・起き抜けに冷凍庫から血液パックを取り出してずるずる
・アイスが食べたいと言ってたでしょう
・血縁と因縁
・うちの家系は男が早死にするんだ
・猫又は笑う
・カラス
・背中から翼が生えている有翼人
・アリア
・フーガ
・ソナタ
・だめだもう分からない
・ドッペルゲンガーを愛する、フーガは追い掛ける曲だからドッペル
・ピアノを弾くのをじっと聴いている
・本に埋もれて死にたい
 最初はただ背中が痛んだだけだった。寝ている間にぶつけたか、何か腫れ物でも出来たか、その程度に思っていた。
 怪我でも腫れ物でもなんでもないと知ったのは一週間経って、なお痛みは引かず逆に強まっていくことに気付いてからだった。
 羽化が始まっているらしい。


 羽化が始まった人間は、特定の施設に入らなければならない。持って行けるのはトランク一つの荷物のみで、それに服と、楽譜を入れた。施設は何でも揃っているらしい。ピアノの一つでもあるだろうと思ってだった。
 最後に、伸びた髪の毛を切った。爪も切った。家に置かれたオルガンで何曲も弾いた。指よりも先に背中が痛み、最後は何のフレーズにもならなかったが、弾いた。満足とは思わなかった。この先で満足するまで弾けるかは分からなかった。空っぽな気分だった。羽化するということは、予想以上に体の負担になっていた。好きなはずのピアノも好きなだけ弾けないのは苦しかった。
 施設に行けばその苦しみもなくなると言っていたが、到底信じられなかった。
「あつい、ねえ」
 スイが感嘆したように言った。そこは感動するところじゃないだろう、とサユルが答えると、彼女は繋いだ手をぶらぶら揺らした。
「あついと、生きてるって感じがするんだ。汗、ながれるし。心臓が動いてるのがよくわかる」
「お前は死んでないよ」
「うん、生きてる」
 真新しいキャミソールワンピースの、ずれたストラップをスイの片手が掬う。しなやかな白い手だった。人並に日焼けしたサユルの手とスイの手は面白いほど色が違う。繋いだ手がよりいっそうそう思わせているのかもしれない。
 確かに暑いな、と声に出さずに同意する。
「海、遠いな」
「そうだね。あるくのは、すこし、無謀だったかな」
 ちらりと横を歩く少女の足を見る。ターコイズブルーのサンダルを履く足はゆっくりだが歩き続けている。更に自分の足を見た。すり切れボロボロになったスニーカーは現役で、まだまだ歩けると主張していた。歩くのが苦手なスイの為に、また少し速度を落とす。僅かな心遣いに気付いたらしいスイが、手を軽く握り返してきた。
 松林を横目に歩き続けると、一際強い風が吹いた。潮の匂いを含んだ風は海が近付きつつあることを二人に伝えて去っていく。緩くまとめたスイの髪がさらさら音をたてて宙に舞った。サユルの短い髪の毛も同じように揺れ、額に浮かんだ汗が風で僅かに乾く。
 スイが小さくハミングをしていた。周りの音に掻き消されそうなほど小さな声を聞き逃さないよう耳を澄ませ、それでいて気付かないふりをする。聞いたことのないメロディに、やがて聞いたことのない言葉が重なった。スイの歌声は不思議と甘く耳に残る。穏やかだが、それでいてもの悲しいメロディだった。
 海に行きたくないな、と不意に思った。また少し歩くスピードを落とす。スイは上手く歩けない足を引きずるようにしながら、ただ歌い続けている。怪我をした訳でも欠陥がある訳でもない白く細い足は、必死で地を踏みしめている。
「なあ、スイ」
 アンデルセンの人魚姫は、恋した相手にもう一度会うために、自分の声と引き換えに激痛の走る人の足を得たという。そして恋の叶わなかった人魚姫は泡になって消えてしまった。声と役に立たない足はそれを対価とするにはあまりにバランスが悪いのではないか。幼い頃からサユルはそう思い続け、それは今も変わっていない。
 だがスイは、声をなくし、泡になった哀れな人魚姫ではない。
「おれ、海、行きたくないなあ」
 力を込めて繋いだ手を握る。スイは歌うのを止め、ただ悲しげに微笑んだ。サユルは唇を噛みしめ、そしてただ歩き続ける。
 スイは人魚姫ではない。恋のために声をなくし、不自由な足を手に入れ、泡となって消えるストーリーなど存在しない。だが、歩き慣れない足を捨て、遙か遠い海の向こうへ帰ることは確かで、そしてそれを変えることはサユルには出来ない。スイが歌う。誰にも分からない、スイにしか分からない言葉で。
 金色の日差しが降り注ぐ、その上を仰いだ。きっと海は、高く昇った太陽の光で輝いているのだろう。そして少女はそこに消えていくのだ。別れの時は近い。
 スイの細い指がサユルの指に絡み、そして強く力が込められる。答えるようにサユルもまた力を込めた。痛いほど強く繋いだ手はお互いの体温でひどく熱い。それでも離そうとは思えなかった。
 もの悲しくも甘い歌は止まない。
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