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Bernadette
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冬峰(冬野)……収集家。人間かどうかは不明。珍しい物好き。機械苦手。なんでも手に入る、らしい。欲しい者は何でも手に入るが、手に入ったそれを他人に渡せるとは限らない。
夏野(翠)……高校生くらい。セーラー服。冬峰の助手。クォーター。
夏野(聖)……翠の兄。旅人。
葛木桐子……翠のクラスメイト。黒髪ボブ。非常に仲が悪い。古書店のアルバイト。
狐女……古書店の店主。女。冬峰とは旧知の仲。
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 夏野聖。わたしよりふたつ年上で、男。灰色のような青色のような不思議な目をしている。背が高い。顔の彫りがすこし深い。髪の毛の色が薄い。意外と肌が白い。でもひ弱ではない。眉間にしわがよっている。でもたぶんそれはまぶしいからで、不機嫌なわけではない、とおもう。
 今日は風が強い。風が吹くたび、目の前で色素の薄い髪と私の長い黒髪が揺れた。終わりかけた夏の、暑さをはらんだ風は耳元でごうごうと鳴っていた。声が聞こえない。そもそも聞こえなくて良い声なのかもしれない。耳をふさごうと思ってやめた。そうしたらきっと聖がわたしをよぶ声も聞こえなくなるから。
 そうしてふさがれなかった耳に届いたのは潮騒だった。
 海が近い。



 こんな夢を見た、と聖は言った。
 彼は夜の海にいた。海に浮かんでいた。まわりに陸のかげはなく、海は穏やかに凪いでいた。ちゃぷちゃぷと耳元で水の音がして、彼はただ波に揺られていた。暗い空には月が満ちた形で浮かんでいた。
 やがて、水面を刻むように雨が降りはじめた。それは激しいものではなく、静かな、細い雨だった。それでも月が見えていたから、まるで狐の嫁入りのような雨だった。
 彼の横にはもうひとり、ゆらゆらと揺れていた。彼のいもうとだった。彼によくにたいもうとは何も言わなかったけれども、彼とつないだ手をはなすことはなかった。時折いもうとの長い髪が波で揺れて彼の頬や肩を撫でた。水面に浮かんだ、色の薄い髪の毛は月明かりに照らされてとてもきれいだった。
 いもうとは何も言わず、静かに目を閉じていた。彼もまた、同じように目を閉じた。やがて波が二人をゆっくりと運んでいった。遠くへ、遠くへ。
 海の向こうにはきっと、二人の知らないところなのだろう。けれどおそろしさはなかった。二人はただ手を繋いだまま流されていく。その先になにがあるかは分からなかったけれども、二人一緒なら怖くはないだろうと、そう思っていた。

「クロりんって妹いるよね」
「そのクロりんって呼び方止めようぜ、妹いるよ」
「俺にもいるんだけどね、妹が『お兄ちゃんのお嫁さんになってあげる』って言ってくれたことある?」
「多分、ない」
「多分ってなんだい多分って。……俺、あるんだけど、さ」
「良いことじゃないか」
「うん、小さい時の話だしね、ほのぼのするよね」
「お年頃にそんなこと言われたら大変だけどな」
「そう、多分妹はそう言いたかったんだと思うんだ」
「……?」
「『大きくなったらお兄ちゃんをお嫁さんにしてあげる!』って言われたんだ……」
「…………」
「あれから十年以上。俺の妹はばりばりの運動部でたくましい子に成長しました」
「なあ羽住それフラグ立ってねえ?」
艶やかな白い携帯電話は光らない。
開く。煌々とした画面に新着メールの文字を探したがある訳がなく、ただ持ち主の心を乱すだけだった。
メールが来ない。いつもなら今頃来るはずのメールが来ない。毎日のように、よく話題が尽きないなと呆れと感心の混じる、メールが来ない。

(おかしいな)

毎日届くメールをうっとうしく思う、それに変わりはない。届き始めたその日から、無駄なメールばかりがメールボックスを埋めていった。疎ましい、と返事を送ったこともあったし、最近は返信するのさえ面倒になって何も返事を送っていない。それでも届く他愛もない電子の手紙が今日は届かない。今日に限って、届かない。
そう、疎ましいはずなのに。

(おかしくなんか、ない)

認めよう、と思った。疎ましいと思っているのはただの意地だ。きっと、とっくの昔にメールを心のよりどころにしていたのだ。そうでなければ、誕生日に送られてきた一際華やかなそれに鍵を掛けることもない。送られてきた写真をSDカードに保存することもない。認めてしまおう、毎日同じ時間に届くそのメールが、本当はとても嬉しい物であることを。
だから、どうか、どうか。
震える指が動く。勝手に新規メールを選択し、数少ないアドレスから一人選ぶ。何か書こうとして、何を書けばいいのか分からなかった。だから、白紙のまま送信ボタンを押した。
 体がだるい。気持ちが悪い。世界がぐるぐるまわっている。

「死にそ」

 意味のある単語を吐き出すのさえ面倒くさい。口を開けば意味のない呻きだけが上がる。吐く息が熱い。体の中にこもった熱を口から吐き出しているような気がした。

「死ぬの?」

 冷静に聞き返されてつまらない気分になった。それも一瞬のことで苦しさが上回る。ベッドの横に椅子を移動させ、座っている少女を見た。

「死にそう、だ」
「そう」

 あくまで冷静だ。

「でも、死なれたらわたしはきっと泣くだろうね」
「、へえ」
「どうでも良いことで死んだあなたを思い出してそのたびに泣く。水分の無駄。それってとっても面倒くさい」

 だから、と少女は言う。

「だから死なないでね」
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