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Bernadette
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ベンチに座り、膝に猫を載せている青年を見た。穏やかな色をしたシャツに銀色のネックレスをつけた、温厚そうな青年だ。その青年が黒崎の知っている男だと言うことに、しばらくして気付いた。

「羽住さん」

黒崎の声に顔を上げた羽住が、一瞬驚いたような表情をした。だがそれはすぐ笑顔に変わる。

「やあ黒崎。ずいぶん久しぶりだね」
「そうですね。一年ぶりくらいですか」

彼の横に腰掛ける。羽住の膝に載った猫はすやすやと寝息を立てていた。その背を優しく撫でながら、羽住は言う。

「しばらく見なかったからどうしたのかと思ってたんだけど」
「普通に学校に通ってましたよ。羽住さんこそ、どうしたんですか」
「俺? 俺も普通に通ってたよ」
「でも、一年も会わないってすごいですよね」
「そうだね」

感慨深そうに頷きながら羽住は猫を撫で続ける。その三毛猫を見ながら、黒崎は彼に尋ねてみた。

「羽住さん」
「うん?」
「その猫、なんて呼んでるんですか」
「ああ、こいつ? マカロニって呼んでるよ」
「……」

およそ一年ぶりの再会は、しかし、彼のネーミングセンスの無さを再確認させるだけだった。
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「追う必要はないぞ」

薬師の声を聞いたタイラが不思議そうな顔をして追い掛けようとしていた足を止めた。冷静そうに見えるが彼女は随分と焦っているようで、自分が靴を履いていないことに気付いていない。ソファーの横に積み上がった靴の箱から、適当なローファーを取り出しタイラに放った。そこでようやく素足に気付いたようだった。

「つまり、どういうこと?」
「つまり、そういうこと」

薬師も自分のスニーカーを、ことさらゆっくり履く。既にローファーを履いたタイラはドアを開けて外に出ている。焦るなよ、とのんびり言うと、つまりは、とタイラが遮った。

「追わなくて良いのは、そういうこと?」
「追わなくて良いのは、そういうこと」

いつものように答えると、ようやく納得したのかタイラは大きく息を吐いた。鍵を閉め、エレベーターの下行きのボタンを押す。一階上からエレベーターが到着し、ドアが開いた。二人で乗り込み、一階に降りた。さっきまで降っていたはずの雨は止み、青空が見えていた。
マンションの前に人だかりが出来ていた。タイラが無言でマンションから出る。その背を追いながら薬師も人だかりの方へ向かう。事故だ、人が、という声が聞こえた。
タイラの足が止まった。人と人の間から、道に直角になるように止まった車と、道路に転がる誰かが見えた。人と車が衝突したのだと一目見て分かった。転がる誰かの方はちょうど人混みが邪魔になって顔が見えなかったが、ダークグレーの袖が見えた。そして、その手に握られたナイフも見えた。
救急車を呼んでくれ、誰か、飛び出しだ、ありゃ即死だろ。目撃者が口々に言う。タイラは無言でそれを見ていた。薬師は事故現場から目をそらし、ただタイラの方を向く。

「な、言ったろ」
「そうだね。こういうの、必然とかって言うのかな」
「人によっては運命とか言うんじゃねえの。どっちにしろくだらない」
「そうだね、人の生死なんてくだらないことだね」
「そうさ、俺があの人があと何分で死ぬのか分かってたってことも、くだらないことだ」
「分かりながらあの時、止めなかったってこともくだらないこと?」

 タイラはからかいを含んだ声と笑顔で、薬師の顔をのぞき込んだ。面倒そうにそれを手で払い、薬師は答える。

「いや、それは大切なことってヤツだ」
黒崎(ジャック)
・女装青年
・長髪
・年下の彼女がいる
・「僕」
・きれると「俺」


黒崎(知一)
・ラノベの主人公みたいなタイプ
・苦労性
・「俺」


黒崎(知一その2)
・中学生
・沖縄人
・無口
・「俺」
・きょういちという兄貴がいる


黒崎(「」)
・地毛が赤い
・大食い
・金魚掬いが得意
・「俺」


黒崎(誠也)
・一回死んでる
・「俺」


黒崎(「」その後)
・年下の幼馴染みを捜している
・25歳くらい
・留学したので英語はネイティブ並
・紅茶好き
・手先器用
・タバコは吸わない
・眼鏡
・「俺」


黒崎(黒友)
・高校生
・タバコ吸う
・人脈広い
・大食い
・「俺」


クロサキ(IB)
・唯一の女
・黒友黒崎の女版
・大食い
・「わたし」
ミートソーススパゲティを食べたいが、ミートソースがないとタカに言うと、彼は黒崎の冷蔵庫を勝手に開けた。黒崎が止める間もなく冷凍庫も開けられ、勝手に中を見られた。

「作れば良いんじゃね?」

手を突っ込み、タカが冷凍していた挽肉を取り出した。

「ああ、その手があったか」
「だろ、タバスコもあるし作れば良いだろ」
「……へ?」

じゃあ作るか、とソファーから立ち上がったところで、黒崎ははて、と首を傾げた。タバスコは冷蔵庫の中だが、それとミートソースがどう関係あるのか、分かりかねたのだ。

「タバスコ?」
「タバスコ」
「なんで? いや、食べる時にかけるけどさ」
「え、作る時使わないか?」
「まあ、食べる時に使うくらいなら最初から入れるってのもアリだけど」
「だってミートソース赤いじゃん」

沈黙。

「……なあ、タカ。お前、ミートソースの材料言ってみ」
「挽肉とタバスコだろ?」

更に沈黙。

「…………」
「え?」

はたして彼に何から言えば良かったのか分からなかった黒崎は、そのまま無言でミートソースを作ることにした。
泣き腫らした目を更に腫らすように少女は泣く。エンに縋りつき、泣きじゃくる。
癖のない黒髪を梳く。カヒロの手はエンの背中に回され、その指が痛いほどに食い込んでいた。

「エン、エン」
「なんだいカヒロちゃん」
「わたしは、あなたが死ぬ、ゆめを、みました」

嗚咽の合間に言葉を吐き出しそしてまた少女は泣き続ける。カヒロの目から溢れる涙はエンの服を通して肌を濡らした。涙は温かく、同時に冷たい。

「しなないで、しなないでください、エン」
「大丈夫だよカヒロちゃん。それは夢だ」
「おねがいだから、しなないで。ここにいて」

背中に爪が食い込む痛みは甘い。エンは少女の頭に顎を載せ、あやすようにその背を撫でた。目を閉じたその闇に、ぐしゃぐしゃの車と、電柱と、内臓の飛び出た己の腹が映った。てらてら光る内臓の生々しさに唇を噛んだ。カヒロは泣き止まない。
ごめんね。唇だけを動かして呟いた。

「大丈夫、おれはカヒロちゃんの傍にいるから」

ごめんね。おれは君をおいていく。そうして自分の死を見た少年は、少女に嘘を吐き出す。

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