「トルソーになりたい」
少女がソファーに気怠げに体を預けながら言った。それをデッサンしながら絵描きは問う。
「手足があった方が楽じゃないか」
「そうかしら」
そりゃそうだろう、と絵描きは自分の手を見た。鉛筆を握る手がなければ彼は絵を描くという仕事が出来ない。
少女は不思議そうに首を傾げた。
「でも、不完全なぐらいがちょうど良いと思うの」
「完全な人間なんていないよ。……首、元に戻して」
「ん」
「そもそも、両手両足がなかったら逆に完全な気がするよ、形としてね」
元のポーズに戻った少女がきょとんとした顔をした。それは一瞬で、すぐに納得したような笑顔に変わった。
「なるほど。それじゃあ、無くすとしたら片腕だけ、片足だけの方が良いのね」
「だからって切断する必要はない。言っただろ、完全な人間なんていない」
僕も君も不完全なんだから、と絵描きは言う。少女はにっこり笑って見せた。それをデッサンしようとして、絵描きは止めた。
PR
この記事にコメントする