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Bernadette
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ベルベットに似たなめらかな花びらは真紅だった。近付けば近付くほど、咲き誇る薔薇の匂いがまとわりついてくる。一点の汚れもない花は、今がもっとも美しい瞬間なのだろう。赤い薔薇に顔を寄せると、よりいっそう香った。
左手で一本、ぱきりと折る。棘が手袋越しに手のひらを傷つけたが気にしなかった。もう一本、もう一本と折る。今が盛りの花を折る。やがて折った薔薇は両手に抱えるほどになった。
二瓶はしばらく抱えた薔薇を見つめていた。まるで花束のような薔薇の束は、折られてもまだ生き生きと赤色を主張している。
だが二瓶は、折られた花の命が長くないことを知っている。
目を閉じる。瞼の裏の暗闇に花の真紅が焼き付いて離れない。棘のある茎を掴む手が痛んだ。目を開ける。手のひらの痛みを知りながら、二瓶は花をぐしゃぐしゃとむしり取り始めた。
むしり取られ握りしめられた花びらは無残に変形し、ごみのように地に落ちた。二瓶の足下が赤く彩られていく。薔薇の匂いが悲しげに風に流れていった。

「にへいさん」

少女の声がした。

「なに、してるの?」

舌っ足らずな少女が薔薇の木と薔薇の木の間から、不思議そうに二瓶を見ていた。真っ白なワンピースを着た少女が顔を出している、その薔薇の木の花は白だった。
途端薔薇に興味をなくした二瓶は、握りしめていた手をぱっと離した。薔薇の束が乾いた音をたてて足下に広がった。

「なんだ、いつから見ていたんだ、八坂」
「お花、ばらばらにしてるとこ」

とことこ近付いてきた少女は二瓶の足下の薔薇を一瞬寂しそうに眺めたが、その視線はすぐに二瓶の手に移った。驚いたように目を見開いた少女に二瓶は首を傾げ、自分の手を見た。棘で傷つけたのだろう、白い手袋に血の色が染みついていた。

「たいへん。洗わないとばい菌はいるよ」
「大丈夫だ」
「だめ。いたいでしょ」
「そうだな、確かに痛い」

自分の腰ほどしかない少女の頭に、いつものように手を載せようとして止めた。少し悩んで、また新たに薔薇を折った。今度は手を傷つけないよう、葉と棘を抜く。

「八坂、手を出してみろ」
「はーい」

素直に差し出された手の上に、その薔薇を載せた。少女の後ろでは白い薔薇が咲き誇っている。振り返る。赤い薔薇は物を言うことも出来ずただ咲き続けている。少女の手の中の薔薇もまた、咲き続けている。だが、二瓶はその花が、永遠に美しいままではないことを知っているのだ。

「きれい」

それを知らない少女は無邪気に笑う。匂いを確かめるように口付ける姿を見ながら二瓶は自分の手を握りしめた。花びらに似た赤色が染みついた手袋越しに、人肌の温かさはなかった。
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