こんな雨の日は古傷が痛む。そう言って彼の手が髪の毛を掻き上げた。左のこめかみにひきつった傷跡が一つ。赤紫に歪んだ線は肌色には到底なじまない。
「痛みますか」
「それなりに」
「じゃあ、雨の日は大変でしょう」
「そうだな。雨は嫌いだ」
そっと吐いた息はため息だった。彼の左手が髪の毛を離し、傷跡はまた隠れた。いつも通りの彼の横顔に戻る。
霧雨はけぶるように街を濡らしている。手持ちぶさたにビニール傘を回すと、しずくがビニールをつう、と伝って落ちた。
「雨、止むと良いですね」
目の前で信号が、赤から青に変わった。人混みが一斉に向こう側へと渡っていく。足音と水音、そして声。彼の手が動いたかと思うと、傷跡をなぞるように指がこめかみを這った。痛みますか、ともう一度聞くと、痛い、と答えが返ってきた。雨は止まない。
「痛みますか」
「それなりに」
「じゃあ、雨の日は大変でしょう」
「そうだな。雨は嫌いだ」
そっと吐いた息はため息だった。彼の左手が髪の毛を離し、傷跡はまた隠れた。いつも通りの彼の横顔に戻る。
霧雨はけぶるように街を濡らしている。手持ちぶさたにビニール傘を回すと、しずくがビニールをつう、と伝って落ちた。
「雨、止むと良いですね」
目の前で信号が、赤から青に変わった。人混みが一斉に向こう側へと渡っていく。足音と水音、そして声。彼の手が動いたかと思うと、傷跡をなぞるように指がこめかみを這った。痛みますか、ともう一度聞くと、痛い、と答えが返ってきた。雨は止まない。
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