いわく、彼に手に入れられない物など存在しない。
「例えば人魚の肉、というよく分からない何かも、私は手に入れることが出来る」
収集家は今日も安楽椅子に体を預け、退屈そうにしていた。その目の前にはアンデルセンの人魚姫。その辺りの本屋で私が買って来た、安っぽい絵本だ。
「さて夏野。彼女は人魚の肉を得て、一体どうするつもりなのかな?」
数時間前、この収集家の前で頭を下げた女性を思い出す。人魚の肉が欲しいのだと訴えた女性に、彼はにっこり笑って応えた。分かりました、必ず手に入れてみせましょう――
「食べる、とか」
「そうだろうそうだろう。人魚とはいえしょせんサカナ。肉が欲しいのならば食べるのが目的だろうよ」
「でも、どうして食べるんでしょうか」
私のもっともな質問に、収集家は呆れたような表情を見せた。それでも私の問いには答えてくれるのだから、彼もお人好しなのかもしれない。
「それはな夏野、人魚の肉を食べると、不老不死になるという伝説があるからだ」
だが忘れてはいけないよ、と彼は言う。存在し得ない物さえ手に入れてしまう、収集家は嗤う。
「そんなものを食べて本当に不老不死になれるのならば、とっくの昔に皆人間を辞めているのさ」
「例えば人魚の肉、というよく分からない何かも、私は手に入れることが出来る」
収集家は今日も安楽椅子に体を預け、退屈そうにしていた。その目の前にはアンデルセンの人魚姫。その辺りの本屋で私が買って来た、安っぽい絵本だ。
「さて夏野。彼女は人魚の肉を得て、一体どうするつもりなのかな?」
数時間前、この収集家の前で頭を下げた女性を思い出す。人魚の肉が欲しいのだと訴えた女性に、彼はにっこり笑って応えた。分かりました、必ず手に入れてみせましょう――
「食べる、とか」
「そうだろうそうだろう。人魚とはいえしょせんサカナ。肉が欲しいのならば食べるのが目的だろうよ」
「でも、どうして食べるんでしょうか」
私のもっともな質問に、収集家は呆れたような表情を見せた。それでも私の問いには答えてくれるのだから、彼もお人好しなのかもしれない。
「それはな夏野、人魚の肉を食べると、不老不死になるという伝説があるからだ」
だが忘れてはいけないよ、と彼は言う。存在し得ない物さえ手に入れてしまう、収集家は嗤う。
「そんなものを食べて本当に不老不死になれるのならば、とっくの昔に皆人間を辞めているのさ」
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