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Bernadette
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 自由とは何だろうかと時々考える。こうして歩けることは一つの自由なのだろうか。しかし私が歩いているのは一種の義務に過ぎない。なぜなら私は食事を運ばなければならないからだ。あの人にこの湯気を立てる食事を差し出して、食べきるのを待たなければならない。私の仕事であるからだ。つまり歩くことは仕事であり、なかば強制されていることである。
 だがしかし、自由に動くという意味では、やはり歩くことは自由なのだろう。分からない。ぐるぐる回って一周してしまう。だから私は考えるのを止める。ありとあらゆる思考を止め、ただ体を動かすことに専念する。そうすると不思議と何も感じなくなるのだ。責任感や、罪悪感さえ。
 おかしなことだ、私が罪悪感を抱く理由などどこにもないのに。いや、あると言えばあるだろうが、しかしそれは私がしたことではない。私はあくまで、世話をする役を仰せつかっているだけのハウスメイドのようなものだ、あるいはもっと下等な物かもしれない。何せこれくらいの仕事など、ロボットにだって出来るのだから。
 部屋は打ちっ放しのコンクリートの壁が寒々しい、灰色をしている。高い位置にある窓から日光が燦々と降り注いでいるが、日差しは部屋の隅に置かれたパイプベッドには当たらない。故にその人は肌が白い。パイプベッドの上で上半身を起こし、じっと私を見ているその人は。

 その人はポトフをことさらゆっくり食べる。器の中の煮込まれた野菜をスプーンで器用に二つに割って、小さく口を開いてそれを噛む。私は横でそれを見ている。

 その人は何もいらない、と言った。それは物質的な意味でも、精神的な意味でも。
 毎晩のように私のご主人様は愛を具体化した行為をその人と交わす。ご主人様は愛しているらしい。だがその人は愛すらいらないという。ただ、この部屋の中で朽ちていきたいという。
 だがそれをご主人様は許さない。その人がずっと美しくいられるよう努力している。だから私はその人が、食事を終えるのをじっと待っているのだ。そうでもしなければどんな食事も食べずにやせ衰えて、きっと醜く死んでいくだろう。餓死した人間の醜さは、私も何度か目にしている。
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