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 覗き込んだ目の色に一瞬心を奪われた。暗色の虹彩は近付くと灰色がかっているように見えた。不思議な色だった。


 ノイズ、ノイズ、ノイズ。耳に届いた声は雑音混じりでよく聞こえない。相手が何を言おうとしているのか聞き取ろうと全ての神経を耳に集中させる。だけど声は聞こえない。ただ相手の呼吸と、誰とも区別のつかない音の嵐。
 息を吸う。息を吐く。そういう営みを無視するかのように灰色の瞳。綺麗だ。ほんとうだ、綺麗だ。くらくらする。眩暈がする。そして頭が痛い。あたしの中をぐるぐると、たくさんのものが渦巻いている。
 灰色の目をしたその人は笑う。唇を少しだけ動かして。手にしていた本が滑り落ちて床に落ちた。音は大きかったのに少しも響かなかった。図書室は静かなのにとてもうるさい。雨が降っている。
 透明なガラスが濡れている。あたしの眼球の表面を、同じように涙が濡らす。目の前の灰色の目もそうなのかしら。
 伸びた爪、細い指、白い手首。手首にぶら下がる銀色の時計がたてる音、本の匂い、雨の気配。頭痛。まるで意識を途切れさせようとするように痛む頭。現実をジャミングしているのです。そっと触れた。それだけだった。踊るような足取り、軽やかなステップ、誰もいない廊下へ。
 少しだけ濡れた廊下はステップを踏む度に音高く叫ぶ。あたしも叫びたかった。でもきっと叫んじゃいけない。踊る人達が誰一人として声を上げないように、あたしも声を上げず綺麗に笑っていなきゃいけない。誰がそう決めたかってあたしにも分からないけど。そういうものなんでしょう、だってあたしの周りの人達は、あたしが綺麗でおとなしくて清純で、そういうイメージを勝手に抱いてあたしになにかを期待している。そしてイメージが崩れたら、唾を吐いてさっさと消えてしまうのだ。残るのはぼろぼろになったイメージを必死で直そうとする、醜いあたしだけだ。
 だけどあたしだってほんとうは、そんな綺麗なものじゃない。あたしは観賞用の人形じゃない。あたしだって、恋をする。
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