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ねーC、親に捨てられた優等生と身に覚えのない罪で逃亡してる人物とのファンタジー書いてー。



「わたしは実は、魔法使いなのだ、よ」

 相変わらずどこか舌っ足らずな調子で、彼はふうふうと熱いティーカップの中身を吹き冷ましながら私に言った。年の割に話し方がこんななのは、実は数時間前に熱い缶ココアを飲んで舌を火傷したからである。それを見た私は思わず大笑いしたのだが、彼はいまだに根に持っているらしく、ここ数時間は少し不機嫌気味だった。
 そんな男は魔法使いなのだという。黒いコートを着た、この人は。
「まほうつかい」
「まほうつかい」
「うそだあ」
「なにを根拠に、うそだと言うのだね」
「それっぽくない」
「ひとを、見た目で判断しては、いけない。道端、で寝転がっている人が賢者の可能性も、なきにしもあらず、だ」
 全国チェーンのコーヒーショップの一番奥、薄暗い照明とコーヒーのにおい、私は目の前の温められたスコーンを崩す。ぽろぽろのスコーンはフォークで刺すたびにかけらになって、結局私の口にはあまり入ってくれない。思わず指先でつまんで口に放り込んでから、私はびくりと肩を震わせた。怒られる、と思ったからだ。
 けれど目の前の自称魔法使いは、やっぱりティーカップに息を吹きかけていた。私を叱る大人はここにはいないのだ。
「魔法使えるのね」
「まほうつかい、だからな」
「だから逃げてるの」
「そうかもしれない」
「あいまいね」
「秘密、だからだ」
「魔法も?」
「魔法も」
「使ってくれないの」
 私はこの人の名前を知らない。歳を知らない。どこから来たのか知らない。何も知らない。何を聞いても秘密、というからだ。ただ、彼は逃げている、とだけ教えてくれた。あとは彼の行動から推し量る。寒がり。温かい飲み物をよく飲む。甘いものが特に好き。一週間のうち、ココアを飲んだ回数は18回。コーヒーは0回。今飲み終わったのはミルクティー、これは3回。寒がりのくせに私にマフラーを貸しているものだから、しょっちゅう首元を擦っている。少しだけ申し訳ない。
 目の前の魔法使いは少しだけ悲しそうに笑った。
「わたしの魔法では、君が本当にほしいものを、与えることは、できない」
 だから、使わない、と言い切って、男の人はミルクティーを飲みきった。私の前にはいまだ食べ終わらないスコーンが三分の二。汚れた指先をナプキンで拭う。行儀が悪いと怒る人は、学校で頑張れば褒めてくれる人は、もういない。
 魔法使いがひょい、とスコーンのかけらを勝手にとって食べてしまった。私のスコーン、とつぶやけば、ごちそうさま、と返ってくる。そうじゃない。きっと私がほしいのはそういう言葉じゃないのだ。それを目の前の人に望むこと自体、間違っていると分かっているのに。
 滲んだ目の前で魔法使いの指先が踊る。ふわり、漂った白い煙はティーカップからあふれてきた。甘いミルクティーの香りがする。空っぽだったカップをまた両手に持ってふうふう息を吹きかけて。
「ゆっくり、食べなさい。なんなら別の、注文してきていい」
「別の」
「子供は食べ盛りだから、な」
 じゃあミルクティーがいい、と鼻を鳴らして言えば、魔法使いはにっこり笑ってよろしい、と指を鳴らした。


*逃亡どこいった
*身に覚えのない罪どこいった
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