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Bernadette
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 何もかも腐り落ちそうなほどに暑い日だった。

 最初はボストンバッグにしようと思っていたが、この季節にボストンバッグは暑い、と却下され、次に段ボール、と言ったが居心地悪いから、と却下され、結果として朔は荷物をバスケットに入れて両手に抱えることになった。両手が塞がって不便だと抗議したものの、荷物はがんとして譲らなかった。
「ワガママすぎる」
 呟き、藤で編まれたバスケットを抱え直す。朔の声は雑踏に飲み込まれ、おそらく誰の耳にも届かないだろう。歩く人々は皆無関心に歩を進めていく。その中で一際ゆっくり朔は歩いた。
 バスケットの中でもぞもぞと動く気配がする。
「ワガママ? 失礼なことを言うな。誰だって居心地が悪いのは嫌だろう」
 低く、平坦な男の声はやはり、音の波に巻き込まれて人の耳に届くことはない。唯一朔だけが聞いていた。
 唇を尖らせ、額の汗を拭う。制服のシャツがべたべたと背中に張り付いていた。
「その通りだけどさ。でもさあ、そうなった原因は誰のせいなんだって」
「俺だな」
「なんで体なんてなくすのさ。それでなんで生きてるの、生首だけなのに」
「何を今更。悪魔だからに決まってるだろ」
 バスケットの中から聞こえる声は、どこまでも淡々としていた。いっそどこかに置いて捨ててしまおうかとも思ったが、一般人に見つかって良いものではないし、何よりこのバスケットの中身が後々報復にきそうで恐ろしい。結局、バスケットの外側を軽く小突くにとどまった。
 何もかも腐り落ちそうなほどに暑い日だった。
「アンタの体、今頃腐ってるんじゃないの?」
 ふざけて言ってみれば、バスケットの中身の生首は、珍しく神妙そうな声色で答えた。
「それは困る。俺はゾンビになる趣味はない」
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