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 フラッシュ。ノイズ。
 眩しさに目を閉じ、轟音に体を壊された。だがそれも一瞬のことで、気付いた時には真っ暗だった。石造りの部屋の隅っこで固まっていたことに気付いた。体の節々が、痛む。
 湿った空気は甘く腐った匂いがした。石に囲まれた部屋は寒かった。冷えた指先が赤い。息を吐きかけ温めようとしても、その息さえ白く濁った。寒さのわりに服は薄着だった。
 とにかく、暗く寒いこの場所から出ていかなければ、と少女は思った。何故こんなところにいるのかさっぱり分からないのだ。頭の中で警鐘が打ち鳴らされているような、そんな感覚がした。ここは良いところではないと漠然と思った。
 石造りの部屋の扉は重たかったが、少女が体重を掛けて押し込むと、錆びた音をたてて開いた。やはり石造りの廊下には等間隔で明かりが灯っていた。ほんの少しの安堵をため息にこめて歩き出す。同じように並んだ扉からは何の気配も感じられず、廊下にも人気はない。無人の廃墟のようだった。
 古びた階段を上ると、また扉があった。それをおそるおそる開けると、どうやら外に出たらしかった。はっきりとは分からなかった。外は明るかったがそれは全て灯りのせいで、見上げた先に青空も何も無かったからだ。何かに覆われているのか、それとも夜空なのか。ともかく光で満ちてはいたが暗いことと少女の知らない街であることには変わりなかった。
 どうやら少女が開いた扉は通りから隠れたところにあるらしかった。喧噪に向かって歩き始めると、やはり少女の知らない街並を人々が歩いていた。石畳やさがった提灯はいつか見た祭の日によく似ていた。男も女も年齢も関係ない人々が行き交う通りの眩しさに、一瞬の眩しさを思い出してすぐ忘れた。
 途方もない気持ちになった。ここはどこなのか分からず、自分の知っている人を探すにも苦労しそうな人波だ。少女は小さく呻いて通りから背を向けた。
 さっきまでのように体を縮めて固まった。相変わらず、体は痛い。おかあさん、と呟くと、途端に目から涙が溢れてきた。
「おや、こんなところに」
 袖で涙を拭った時だった。濃い影が自分に落ちた、と思って見上げると、仏頂面の老人が立っていた。見知らぬ老人に驚いて思わず涙が止まる。老人は少女の祖父のような白髪ではない、黒々とした髪を後ろに撫でつけていた。仏頂面な上に細いがしっかりとした体格で、見上げた姿は恐怖を引き出すに足る外見をしていた。
 だが、老人はかがみ込んでわしゃわしゃと少女の頭を無遠慮に撫でると、腕を引いて立ち上がらせた。
「家に帰ろうな」
 たった一言、老人がぐいぐいと腕を引っ張り歩き出した。慌てて足を動かしついていく。まるで犬の散歩のようだ。小走りになりながらも少女が疲れそうになると歩調を緩めてくれる辺り、一応気は遣ってくれているらしかった。
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