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Bernadette
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 ルウは何も持っていなかった。乱れたセーラー服に裸足で、真っ赤な目。いつもはさらさらの髪の毛は無残な有様で、涙を流す目と頬は真っ赤だった。
 ルウは言った。わたし、もう、いえにかえれない。じゃあどうするの? 問いかけた私にルウは言う。
 夜街に行く。


 夜街の入り口は、山を登った先にあるらしい。でも、ふつうの登山道からは行けない。登っている途中に獣道に入らなければならないらしいけれど、一体どの辺りを指しているかなんてさっぱり分からなかった。
 でも、ルウの足取りは確かな物だった。私が貸したスニーカーにセーラー服で、草がぼうぼうに生い茂った山道を無言で登った。私は彼女にジャージを貸そうかと申し出たが、彼女はかたくなに拒んだ。行けるか分からないところに行こうというのに、食糧も何も持とうとしなかった。だから私は動きやすいジャージに、ルウと私の分のパーカーと食べ物とタオルをリュックに詰めて背負った。
 山道は一歩を踏み出すのさえ大変だった。びっくりするほど息が切れて、私もルウも足を何度も止めた。持ってきた水が役に立った。休憩の度に彼女に水を差し出すと、ルウは何度もありがとう、と小さな声で言った。
 山の中腹に来た辺りで、ルウはいきなり登山道を外れた。どうしたの、と聞くと、こっちに夜街があるみたい、と答えた。私は半信半疑のまま、彼女の背中を追った。セーラー服の細い背中が妙に、確信に満ちていた。


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 葬儀は青空の下、どこから溢れてきたのかとうんざりするほどの人の群れの中で行われた。
 生前特に親しいというわけではなかったので、私は寺の庭に立っていた。小さな寺の中には参列者の全てが収まらなかったのだ。特に不満はなかった。その人一人死んだからといって私は特に何も感じなかったし、ああ、そうか、という、本当にその程度の感覚だった。

 目を引いたのは、白と黒の幕の前を颯爽と歩く、黒い喪服の男だった。
 若いというのに今時珍しい和服での参列らしい。男らしく骨張った手首がちらりと見え、それが妙に眩しかった。青空も同様に眩しかった。
 イサナは変わった男だ。夜街を歩き回り見張る宵待衆の彼は、ほかの宵待衆よりも外に行く機会が多い。別に誰も、夜街すらもそれを止めないので、きっと許されていることなのだろう。三日に一度は必ず門をくぐり山道を行き、鳥居をくぐって外に出る。時々私を抱いて、だ。
 イサナはチョコレートが好きだ。一日一枚、多いときだと五枚、板の形状をしたそれを貪り食う。ぱきんぱきん、と鋭い歯で折って、無表情に飲み込む。なぜ板チョコばっかりなのかというと、それが一番効率がよいからだという。ゴミも最小限で済むし、味も無難なのだと言っていた。彼が外に頻繁に行くのは、このチョコレートが欲しいからだというのも理由の一つだ。
 宵待衆の詰め所の屋根に乗り、のんびりあくびをしていると、黒い布で顔を覆ったイサナが私を呼んだ。見回りが終わったのだ。入れ違いにトオツが詰め所から出て、イサナと見回りを交代する。イサナよりも一回り大きな体はするりと街の中に消えていった。
 詰め所に入るイサナを追って、私は屋根から降りて彼の足にすり寄った。ごろごろと喉を鳴らすと、彼の手が私を抱き上げる。チョコレートの匂いが染み着いた手だ。甘い匂いは、私は決して食べないけれど嫌いじゃない。ごろごろ、ごろごろ。
 詰め所には今はイサナしかいない。夜街の見回りだけではない、夜街に続く入り口の見張りもしなければならないからだ。たぶん、もう少ししたら別の見回りが帰ってくる。そうしたらイサナはまた行くのだろう。彼は私を抱いたままチョコレートを取り出し、黒い布をつけたまま食べ始めた。小気味の良い音を立ててチョコレートが割れる。甘い匂いがする。
 軽い足音がしたのは、彼が今日の分の板チョコを残り四分の一まで減らした時だった。
 私はイサナの腕を蹴って降り、入り口まで近づく。イサナが首を傾げながら後ろをついてきた。足音は躊躇いがちに近づいてくる。目を凝らすと、詰め所に向かって子供がぼんやり歩いてきていた。
 にゃあ、と私はイサナに向かって鳴いた。あの子供、どうするの?
 気付いたイサナはチョコレートを仕舞い込むと、慎重に足を踏み出した。


 ワンピースを着た子供は茫洋とした目でふらふらと歩いていた。詰め所から出てきたイサナに気付いた様子もなく、惰性のように足を踏み出しては地面を蹴り、踏み出しては蹴る。裸足だった。
 イサナは無言で子供の肩をつかんだ。子供は何も反応しない。動きを止めようともしない。イサナが強く揺さぶる。どことも知れないどこかを見ていた子供の目が緩やかに瞬いた。
「もしもし?」
 耳元で声をかけると、また瞬きをした。ぱちぱち。ぱちぱち。私はにゃあと鳴く。子供の目が私を見た。
「……ねこ」
 そうですよ、私は猫ですよ。イサナが身を引いた。子供は夢から覚めたように顔を上げ、おそるおそる周りを見渡した。乾いた髪が頭を振るたびに揺れる。不安げな顔をした子供は小さな手でワンピースの裾をつかみ、目を潤ませた。
「ここ、どこ」
・「わたし」と彼の話
・彼の友人達の話
・「わたし」と「私」の話

つまり楽園は人によって違うのです

・愛し方、愛され方の相違
・ここがわたしたちのらくえんです
・二人きりの世界を作るカップルと、愛し合っているのに告げない二人組、それをただじっと見ているだけの人

・真っ向から反論したら殴られた
・どっちが正しいのか分からない
夏冬
・物の話
・珍品コレクターとその助手の大学生
・珍しい物とそれにまつわる人の話
・昼間のイメージ

春秋
・どっちがどっちなのかはまだ未定
・ホラー
・人の悪意や存在されては困る諸々
・夜のイメージ


・それぞれ一月単位で考えて、計12の話が出来る。
・そんなに書けるのか
・いや無理だろ
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