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 ルウは何も持っていなかった。乱れたセーラー服に裸足で、真っ赤な目。いつもはさらさらの髪の毛は無残な有様で、涙を流す目と頬は真っ赤だった。
 ルウは言った。わたし、もう、いえにかえれない。じゃあどうするの? 問いかけた私にルウは言う。
 夜街に行く。


 夜街の入り口は、山を登った先にあるらしい。でも、ふつうの登山道からは行けない。登っている途中に獣道に入らなければならないらしいけれど、一体どの辺りを指しているかなんてさっぱり分からなかった。
 でも、ルウの足取りは確かな物だった。私が貸したスニーカーにセーラー服で、草がぼうぼうに生い茂った山道を無言で登った。私は彼女にジャージを貸そうかと申し出たが、彼女はかたくなに拒んだ。行けるか分からないところに行こうというのに、食糧も何も持とうとしなかった。だから私は動きやすいジャージに、ルウと私の分のパーカーと食べ物とタオルをリュックに詰めて背負った。
 山道は一歩を踏み出すのさえ大変だった。びっくりするほど息が切れて、私もルウも足を何度も止めた。持ってきた水が役に立った。休憩の度に彼女に水を差し出すと、ルウは何度もありがとう、と小さな声で言った。
 山の中腹に来た辺りで、ルウはいきなり登山道を外れた。どうしたの、と聞くと、こっちに夜街があるみたい、と答えた。私は半信半疑のまま、彼女の背中を追った。セーラー服の細い背中が妙に、確信に満ちていた。


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