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Bernadette
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メルヘンティックなら変人キャラクターを使えそうな気がする。

・スバル(サイカワ・スバル)
犀川昴。目玉好き。グラスアイ収集家。あるいはグラスアイ制作者。目玉が好き。理想としている目がある。あの目に勝る者はない。

・???名前未定
スバルが理想としている目。幼少時に視力を失い盲目。ただし耳が素晴らしく良い。基本的に目を閉じて生活している。開けると焦点が定まらず、その顔の醜さを自分自身が嫌っている。春琴抄の春琴のような、目が見えずとも美しい人。凛としている。声楽家とかどうだろう。あるいはピアニスト。スバルが生活の援助をしている。あれこれなんて春琴抄。

・山崎
美大生。コンクールで最優秀賞を易々とかっさらっていくような人。天才に近い。家族仲が悪い。薬師とルームシェア中。人の話をあまり聞かない。悪い意味でマイペース過ぎる。性格はそんなに暗くないし、黒くもない。マイペースなことを除けばふつうの人。裸婦画のモデルになってくれるような可愛い彼女募集中。でも薬師がいるから家に連れ込めない。

・薬師
山崎と高校からの付き合い。頭は良いけどいろいろ事情があって喫茶店店員に就職。料理がうまい。お菓子作りが得意。本人そんなに甘い物好きじゃない。山崎とルームシェアしてるけどたいていの家事は薬師が担当。別に彼女連れ込んで良いんだよ! 敬語。俺。敬語を使わないと口が悪い。
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 夏野は父方の祖父によく似ている。

 父方の祖父は、ある日忽然いなくなったらしい。夏野が十歳になるかならないかの頃だった。海沿いにある家からふらりと出て行った祖父はそのまま帰らなかった。
 夏野の中で祖父は大きな手の優しげな老人だった。老紳士と言う言葉のよく似合う風貌と態度で、夏野は彼が怒鳴っているのを見たことがない。祖父は夏野を連れてよく海に行った。そのたびに何か、歌を歌っていた気がするがそれが何の歌なのか、今も昔も夏野には分からない。ただ時折懐かしそうに口ずさむその声だけが記憶に残っている。
 祖父がいなくなった時、夏野は悲しむよりも先に納得した。その前の日、祖父は唐突に、いつも大事につけているループタイを夏野にくれた。丸い銀色の型に薄青い破片を閉じ込めたタイ留めの、紺色のループタイだった。その破片が一体何なのか、誰に聞いても分からなかった。とにかくそれが祖父の大切な物だと言うことだけが残り、結局今の今まで大事に仕舞ったままなのだった。
 それをつけようと思った。渡されたその時には似合わなかったループタイは、きっと今なら違和感なくつけられるような気がした。記憶の中の祖父を見習うように、白いシャツを着た。慎重に、壊れ物を扱う手つきでループタイを手にとって首に掛けた。

 冬峰はまず、意外そうな顔をした。普段は楽な格好を好む夏野らしからぬ姿に違和感を覚えたのかもしれない。
 次に、驚いたような顔をした。事実その声にはいくらかの驚きが含まれていた。
「どうしたんだ夏野、それは」
「それっていうとどれですか。格好ですか」
「格好もそうだが、タイ留めだ」

「そうか、お前は知らないのか」

「そのタイ留め、青い破片のような物が挟まっているだろう」
 書斎の机の棚から取り出した薄い箱を開けると、中はシルクらしい白い布で包まれていた。それを更に解くと、雲母の破片に似た薄さの、丸く薄青いガラスのような透明な物が出てきた。土産屋で時々売られている、瑪瑙の丸い置物をなんとなく思いだした。
「タイ留めの破片と同じ物だ」
「石か何かですか」
「いいや、鱗だ」
「鱗? こんな大きな?」
 手鏡ほどの大きさのある鱗を持つ魚などいたのだろうかと考えていると、冬峰は懐かしそうに目を眇めた。
これは鱗だ
・箱に収まった薄く透けた水色の、雲母の破片のような物
・お前も持っているだろう
・ああそうかこれか
・乾ききったそれは大事に仕舞わなければ
・美しい円形をしたものは珍しい


人魚の肉を食べたいのです
・食べたら不老不死になるらしい
・だが食べた人間全てがなれる訳では無い
・さああの女性はどうなるかな?


人魚姫は歌わない
・綺麗な声
・あの声に身を投げよう
・幻を見た
・鱗を透かして見た空はまるで海のようだった
・カセットテープを聴く
・聞いたことのない美しい声を
・ヘッドフォンを奪われる
・聞いてはいけないよ、人魚の声は美しいから惹かれてしまう
・お前は海に戻りたい訳ではないだろう?
「先輩って紐タイ好きなんですかー?」
 言われて触れた胸元で、紺色の紐タイが揺れた。それを留めるタイ留めは楕円形をした銀色に、同じく青色のガラスが嵌っている。もともとは夏野の父方の祖父が使っていた物を、数年前の誕生日に貰った物だった。
「紐タイと言うより、タイ留めが気に入ってる」
 その祖父も、夏野が十七歳になるのを待っていたかのように死んだ。彼の遺品は未だ屋敷の中の一室に閉じ込められているのだろう。夏野が貰ったのはこの一個だけで、それも今の棚に偶然入っていたのを貰っただけだった。探せばまだあるかもしれないが、それだけのために実家に帰るのは面倒だった。
「綺麗な色ですもんね、それ」
 後輩が羨ましそうにタイ留めを見つめてきた。表面にそっと触れる。水の中のような冷たさが指先に残った。


 
 収集家たる冬峰を訪ねてくる客は多い。彼が珍しい物を好んで収集する、そう言う人物だという前提の元にやってくる彼らは何かしらの問題を抱えてくることが多い。冬峰は彼らに対して名は尋ねない。そして同情する訳でも、突き放す訳でもない。ただ彼らの訪問を受け入れ、話を聞く。抱えてくる問題の大半は珍品を巡ってのもので、冬峰が集めた珍品は私の物だから返してくれと言われれば返し、持ってきた物をどうか受け取ってくれと言われれば受け取る。
 つまり、冬峰は集めることに執着しているのであって、集めた物に執着は何も無いのだ。その珍品が増えることにも興味はない。彼の目的は何かを収集すること、それのみなのだと夏野は理解している。
 冬峰の自宅は洋館で、屋敷の造りは多くの人の訪問を前提にしており、客間や応接室、二十畳ほどの小さなホールが広くとられている。大正時代や明治時代を思わせるレトロな造りの館は一人で住むには十分広い。
 総部屋数の半分は使われていない、もしくは倉庫にされているであろうその館の中で、夏野は虎を見た。
「……」
 倉庫代わりにしている部屋の扉が薄く開き、そこから体を滑らせるように白い虎が出てきた。虎はしなやかに体を動かし廊下の奥へ、夏野のことなど見えていないように歩いていった。
 その姿が曲がり角で見えなくなったところで、夏野の肩からスケッチブックの入った鞄が滑り落ちた。さて何事だろうと考えた。冬峰はいつの間に虎を飼っていたのだろうか。しかも、白い虎である。そこまで思って自分が馬鹿げたことを考えていることに気付き、思わず苦笑した。たかだか動物が家の中を歩いていただけだと考えると、そう深刻なことにも思えなくなった。勿論それはただの思い違いであることは分かっていたが、考えるだけ無駄なことが世の中にはたくさんある。
「冬峰さーん」
 落ちたバッグを拾い上げ、夏野は書斎に向かって声を掛けた。一拍遅れて返事が戻ってくる。冬峰は今日も書斎に篭もりきりだったらしい。不健康だと思いつつも夏野も実際は似たような生活をしているので人のことは言えない。学校に残してきたエプロンが頭の中をよぎった。薄汚れたエプロンも、そろそろ洗い時だろう。
 本棚で囲まれた書斎を覗くと、冬峰が振り返って夏野の方を向いた。
「あ、冬峰さん」
「夏野、ちょうど良かった」
「はい?」
 いつものように何を考えているのか分からない顔をした冬峰は、しかし困ったような声を上げた。なんでしょう、と答えると、年齢のよく分からない顔に懇願するような笑みが浮かんだ。
「お前、美大生だろう。絵、描けないか」
「絵、ですか」
「困ったことになった」
「どうせロクでもないことでしょう」
「ああ、いつものことじゃないか」
 皮肉をこめた夏野の言葉に肩を竦めて返し、冬峰が見せたのは掛け軸だった。端が経年劣化で黄ばみ、それなりに古いことが窺えた。薄墨色で木々や岩が描かれているが、それだけだった。一際目を引くような物は何も描かれていない。
 夏野が首を傾げると、冬峰はますます弱ったような表情をした。
「絵が消えた」
「はあ、消えましたか。劣化で?」
「まさか」
「というと」
「自分から出て行った」
 当然のように言ったおかげではいそうですか、と簡単に頷きそうになったが、慌ててこらえる。とりあえず落ち着こうとため息をつき、鞄をひとまず書斎の隅に置いた。
「掛け軸の絵はいつから動くようになったのですか」
「さあな。絵は動かない物と昔から相場が決まっているが」
「変なことですね」
「ああまったく変なことだ。だから価値があるんだろう」
「絵が勝手に動くと言うことが?」
「動かないただの掛け軸を私が収集すると思うか?」
 一拍おいて答える。
「まあ、思いませんね」
「だろう」
 考えるだけ無駄なことが世の中にはたくさんある。
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