部屋の隅に飾っていたフォトフレームの中で笑っていたのは誰だったか。安っぽい金色のネックレスはその時の流行物だった。何一つ本物の存在しないジュエリーボックスの中身を満たすのがまるで自己アピールのようだった。染めた髪の毛を結っていたシュシュはもう色褪せているだろうか。着なくなってしまったあの制服は、使わなくなった鞄の中身は、どうなっているのだろう。
さらさらとした雨は晴れた空から落ちてきていた。通り雨かもしれない。店の軒先で眺めていると、ふと、そういえば二年経ったんだなあ、と今更のように思い出した。
夏野、という少女が死んだのは、二年前の三月だった。
「今年で20歳か」
冬峰に言われて、ああそうですね、と夏野は答え、すぐに、
「女に歳の話題はタブーですよ」
と返した。
「気にしているのか? お前が?」
「実は、まったく気にしていません」
「だろうと思った」
霧のような雨に打たれて帰ると、私室に篭もりっきりだった冬峰がリビングのソファーに腰掛け新聞を読んでいた。開口一番それだった。冬峰がそうなのはいつものことだったが、いきなり歳の話が出てくるのには驚きを隠せなかった。
「そういう冬峰さんは何歳なんですか」
「さて、何歳だったかな」
「はぐらかさないでくださいよ、二年前からそればっかり」
PR
さらさらとした雨は晴れた空から落ちてきていた。通り雨かもしれない。店の軒先で眺めていると、ふと、そういえば二年経ったんだなあ、と今更のように思い出した。
夏野、という少女が死んだのは、二年前の三月だった。
「今年で20歳か」
冬峰に言われて、ああそうですね、と夏野は答え、すぐに、
「女に歳の話題はタブーですよ」
と返した。
「気にしているのか? お前が?」
「実は、まったく気にしていません」
「だろうと思った」
霧のような雨に打たれて帰ると、私室に篭もりっきりだった冬峰がリビングのソファーに腰掛け新聞を読んでいた。開口一番それだった。冬峰がそうなのはいつものことだったが、いきなり歳の話が出てくるのには驚きを隠せなかった。
「そういう冬峰さんは何歳なんですか」
「さて、何歳だったかな」
「はぐらかさないでくださいよ、二年前からそればっかり」
この記事にコメントする