1俺とペット
この男は自分をペット以下の何かだと見なしているようだ。
どうやら骨よりも皮膚の再生の方が早いらしく、皮膚が傷口を覆ってから骨がめきめきと再生し始めるので、皮膚を突き破ってしまう。ひどく痛い。呻く。無くなった右腕がどんどんの形を取り戻していく。それはそうと無くした右腕はどこに行ったのかというと、男の胃の中だ。美味しく食べてしまったらしかった。
2絵師と死に神
ちぎれた自分の手足の先に、白い少女がいた。それはいつか自分が描いた少女であり、自分の理想の形だった。
ああそうか、と思った。
つまりは、自分の死の形だったのだ。描きたいという衝動のもとに描き散らした全てを越えたあの作品の、モデルは、そもそも自分の幻想だったのだ。
白い少女は笑った。迎えに来たのだと笑った。そうだ、これが自分の描きたかった絵なのだ。結局は死へと繋がっていく、それが生なのだ。死神は笑う。
3大詐欺師
雪が溶けて春になる。流れる時間が止まってくれるはずもなく、三月の図書館に訪れる足音は消えた。
カウンターの上で腕を組んで顎を乗せる。あの日確かに触った骨張った手を思い出す。一瞬だけ触れた指先の冷たさは雪に似ている。なら今頃彼の指は溶けているのだろうか。
あの日誰かが言った、永遠は嘘。交わす言葉は無かった。言葉に表せないそれは恋だったのだと、今更気付いたところでどうしようもなかった。
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この男は自分をペット以下の何かだと見なしているようだ。
どうやら骨よりも皮膚の再生の方が早いらしく、皮膚が傷口を覆ってから骨がめきめきと再生し始めるので、皮膚を突き破ってしまう。ひどく痛い。呻く。無くなった右腕がどんどんの形を取り戻していく。それはそうと無くした右腕はどこに行ったのかというと、男の胃の中だ。美味しく食べてしまったらしかった。
2絵師と死に神
ちぎれた自分の手足の先に、白い少女がいた。それはいつか自分が描いた少女であり、自分の理想の形だった。
ああそうか、と思った。
つまりは、自分の死の形だったのだ。描きたいという衝動のもとに描き散らした全てを越えたあの作品の、モデルは、そもそも自分の幻想だったのだ。
白い少女は笑った。迎えに来たのだと笑った。そうだ、これが自分の描きたかった絵なのだ。結局は死へと繋がっていく、それが生なのだ。死神は笑う。
3大詐欺師
雪が溶けて春になる。流れる時間が止まってくれるはずもなく、三月の図書館に訪れる足音は消えた。
カウンターの上で腕を組んで顎を乗せる。あの日確かに触った骨張った手を思い出す。一瞬だけ触れた指先の冷たさは雪に似ている。なら今頃彼の指は溶けているのだろうか。
あの日誰かが言った、永遠は嘘。交わす言葉は無かった。言葉に表せないそれは恋だったのだと、今更気付いたところでどうしようもなかった。
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