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Bernadette
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 こんな夢を見た。

 一面真っ白な雪景色だった。白い地面が広がり、頭上には星が瞬いていた。月のない夜だというのに不思議と目の前が見えた。
 私の目の前には、一人の老人がいた。老人は優雅な形をした、古びた椅子に腰掛けチェロを構えていた。吐く息が雪色になる寒さだというのに、老人は手袋の一つもつけず弓を手にしてた。
 老人は私を見ると、まあそこに座りなさい、と、同じような形をした椅子を指さした。やわらかな雪を踏みしめてその椅子に座った。老人の目の前に、心地よい距離をおいて置かれた椅子は優しく私を受けれた。
 私が座るのを待っていたかのように、老人は弓を動かし静かにチェロを弾き始めた。雪が降り積もる静かさを思わせる、美しい音だった。老人が弾き始めると、星が散らばる藍色の空に美しい虹が架かった。夜の虹だった。
 あれは橋なのだと私には分かった。大きな虹は青空で見るものよりも色鮮やかだった。あの虹は空を渡るための橋なのだ。気づけば地面を覆っていた雪は溶け、水に変わり、せせらぎを生む川の流れになっていた。私の足下も老人の足下も澄んだ水に浸かっていたが、不思議と冷たくなかった。
 遠くから人の声が聞こえた。声は次第に近づきまた遠くなっていった。頭上の橋を渡っていったのだった。
「何故、橋を架けるのですか」
「彼らはこの川を渡れないのです」
「こんなにも浅いのに」
「浅いからこそです」
 チェロを弾きながら老人は答えた。足首が埋まるか埋まらないか、それほど浅い川の流れだった。
「あの橋を渡ると、どこに行くのですか」
「渡る者が行きたいところへ、行くことが出来ます」
「それは、会いたい人の隣に行くことも出来るのでしょうか」
 ひときわゆっくり弓をひきながら老人は笑った。
「そう思ったから、あなたはここにいるのでしょう」
 言われてああそうですね、と私は答えた。私はこの老人と、遙か昔にもう一度会う約束をしていたのだった。老人の架ける虹を渡って私はここにきた。私は渡る者だった。そうしてようやく、希った人のいる場所へたどり着くことが出来たのであった。
 空の端が明るみ始めた。藍色が青色へ変わっていく中、たった一つの星が輝いていた。夜明けがくる。

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