ねえ知ってます、纏足ってその足にみょうばんや砂糖を振りかけるらしいですよ。なんでっていう理由は聞いたことがないんですけど、多分腐らないようにじゃないかなあ。砂糖って腐らないんですよ。だからジャムとか砂糖を入れれば入れるほど長持ちするんです。豆知識。
だからあたしは足に時々砂糖を振りかけます。腐らないように。腐ってそこから体中が腐らないように。
両足のないあたしは家の中を移動するのに車いすを使いますが、正直車いすを使うのさえ面倒なことがあります。そう言う時は床を這いずり回るんですけど、これって端から見たら異様ですよねえ。髪の長い女が両腕で床を掻いてずりずり家の中を移動してるんですよ。どこのホラー映画なんだか。
あたしが床を這いずり回るのは決まって暇な時で、そう言う時は好きな本を読んでも映画を見てもまったく面白くない、そう言う時です。あたしは昔のあたしの部屋に行きます。そこは今はもう倉庫になっています。あたしが両足を無くした日から、あの人はあたしに新しい部屋を用意してくれました。ほら、歩けないから。階段上るの辛いだろうと言うことで、あたしの今の部屋は一階にあります。まあ、時間かければこんな風に、二階に行けるんですけどね。
その部屋は、足があった頃のあたしの残骸ばかりが転がっています。オープントゥのパンプスとか、ブーツとか、ジーンズとか、ストッキングとか、ソックスとか。転がっている黒いローファーを最後に履いたのはいつのことでしょうか。思い出す必要は全くないんですけど。
あたしはその残骸を見る度に、寂しいような、嬉しいような、恍惚に似た感覚を覚えます。でもそれはとても気持ちが悪く、すぐ酷い吐き気を覚えるのです。
だからあたしは、そのたびに急いでキッチンへと降りて、砂糖を自分の、既にふさがった切断痕になすりつけるのです。腐らないように。傷跡から変な物が入り込んで体を腐らせないように。残骸に侵されないように。
だからあたしは足に時々砂糖を振りかけます。腐らないように。腐ってそこから体中が腐らないように。
両足のないあたしは家の中を移動するのに車いすを使いますが、正直車いすを使うのさえ面倒なことがあります。そう言う時は床を這いずり回るんですけど、これって端から見たら異様ですよねえ。髪の長い女が両腕で床を掻いてずりずり家の中を移動してるんですよ。どこのホラー映画なんだか。
あたしが床を這いずり回るのは決まって暇な時で、そう言う時は好きな本を読んでも映画を見てもまったく面白くない、そう言う時です。あたしは昔のあたしの部屋に行きます。そこは今はもう倉庫になっています。あたしが両足を無くした日から、あの人はあたしに新しい部屋を用意してくれました。ほら、歩けないから。階段上るの辛いだろうと言うことで、あたしの今の部屋は一階にあります。まあ、時間かければこんな風に、二階に行けるんですけどね。
その部屋は、足があった頃のあたしの残骸ばかりが転がっています。オープントゥのパンプスとか、ブーツとか、ジーンズとか、ストッキングとか、ソックスとか。転がっている黒いローファーを最後に履いたのはいつのことでしょうか。思い出す必要は全くないんですけど。
あたしはその残骸を見る度に、寂しいような、嬉しいような、恍惚に似た感覚を覚えます。でもそれはとても気持ちが悪く、すぐ酷い吐き気を覚えるのです。
だからあたしは、そのたびに急いでキッチンへと降りて、砂糖を自分の、既にふさがった切断痕になすりつけるのです。腐らないように。傷跡から変な物が入り込んで体を腐らせないように。残骸に侵されないように。
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