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 身の丈に合わない木製の柄の、先端についた鋭い金属を振り下ろす。到底リズミカルとは言えない拙さで、小さな体中を使って、持ち上げては振り下ろし、持ち上げては振り下ろす。ツルハシの先端が固い地面に突き刺さり、そのたびに鈍い音を立てた。
 少女は無言で地面にツルハシをぶつけ続ける。真っ黒なアスファルトは時々小さな欠片となって飛び跳ねた。履き古した編み上げブーツはアスファルトと同じ黒で、それが時々混ざり合って、少女の足がアスファルトと繋がっているようにも見えた。ただ皮のてらてらとした輝きだけが、自分は地面とは違うのだと主張している。
 額を流れ、頬を滑り落ち、汗が一粒アスファルトに落下した。

「……」

 そこでようやく頭を上げ、ツルハシを動かす腕を止めた。少女はぜえぜえと荒い息を吐き、ツルハシを杖のようにしてそれに自分の体重を掛けた。黒く穿った地面を見つめ、大きく溜息を吐き、そのまま力が抜けたようにずるずると座り込む。穴を中心に蜘蛛の巣のように割れた地面は日差しを受けて暖かい。ツルハシから手を離して地面につければ、汗ばんだ手が更に熱を吸い込んでいくようだった。
 少女は恨めしそうに放り出されたツルハシを見、割れた地面を見、そして上を見上げる。

「つかれたあ」

 もう一度溜息をついてそう叫ぶと、馬鹿にしたような、からかうような、そんな響きを持った男の声が後ろから聞こえた。

「だから言ったろ、お前にゃ無理だ」

 少女より一回りも二回りも大きい男は腕を組み、もう点くことがないだろう街灯に体を預けていた。男は唇を歪めて笑う。カーゴパンツのポケットから手袋を取り出し自分の手にはめると、悠々とした足取りで少女に近づいてくる。
 少女が精一杯の力で持ち上げたツルハシを、彼は軽々と持ち上げ自分の肩に載せて見せた。手慣れた様子でツルハシをくるくる回し、もう片方の手で座り込んだ少女の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「ほれ、立ち上がれ。あとは俺がやる」

 そもそもこれは俺の仕事だからな、と肩を竦めた男に促され立ち上がる。熱い手のひらをはたくとぱらぱらとアスファルトの破片が落ちた。流れた汗を指先で拭い、少女は立っていた場所を男に譲る。車も人も通らない幅の広い道路の中央には、男と少女二人きりだった。
 色褪せ掠れた白線を踏みつけ、少女は道路の続く先を見た。どこまでも続くのではないか、と不安さえ抱く道を壊す男の真意を少女は知らない。ツルハシを振り下ろす男の横顔を見ながら、どこかに繋がっているのだろう道が途切れるのを淡々と眺めているだけだ。時折、持ち慣れないツルハシを持ち上げ男の仕事を遊び半分に手伝いながら。
 少女のそれより格段に重い音を立ててツルハシが地面に振り下ろされる。地面が割れる。道はもう続かないと叫ぶようにひび割れた。男の黒いブーツはアスファルトと同じ色をしていて、それは少女も同じだった。
 ツルハシが空を切り、地面を割る音がただ響く。
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