前提
・現代、日本に住んでいる人達の話。
・魔女は魔法を使える、いわゆる典型的な魔女。
・悪魔が存在する。
・魔女は悪魔と契約出来るが、悪魔を使役することには長けていない。
・悪魔を使役することを中心とするのは召喚師。複数の悪魔と契約し、使役する。
・魔法=魔女、悪魔の使役=召喚師といった感じ。
・魔女も召喚師も場合によっては不老だったりする。そして世界中にいる。どちらもその才能がなければなることは出来ない。若干仲が悪い。
・魔女は総称で、男でも女でも魔女。召喚師も同様。
・蓮の言う未来は今その時点で必ず起こること。だが、それを知った上で未来を変えようという意志を持って行動すれば変えることが出来る。
蓮
魔女であり召喚師。どちらの才能も持っていて、どちらも均等に伸ばすことが出来た珍しい人。魔女は基本的に魔女のコミュニティで修行するが、それをしていない。そのため魔女との繋がりや意識が希薄。また、魔女として必須の能力が一部無かったりするがそれも修行を受けていないため。自分からそのコミュニティに行こうとは考えていない。
母親が魔女だったが生まれてすぐ捨てられ別の人に拾われた。拾われた人が魔女と召喚師どちらの知識も持っていたことから両方の美味しいところ取りが出来た。父親が召喚師だったが、蓮自身は両親のことなど一切知らない。
そういう過去があってか親がいる感覚というのがよく分からない。家族というまとまりに対してひどく冷めている。幼い頃はそれなりに憧れたかもしれないが、切望するほどではなかった。そう言う点では普通の人間らしくない。
大体20歳くらい。髪は腰くらいまでで、一つにまとめているイメージ。髪には魔力が集まりやすいので髪の手入れはきちんとしている。スレンダー。基本的には敬語。契約した悪魔の能力の影響で、未来予知が出来る。小さい頃からいろんな知識を詰め込んできたので記憶力が良い。
大学に行っていそうだが、普通大学ではなく芸術系になりそう。音楽系。ピアノや声楽に通じていそう。
副業というか本業というか、週三日くらいで占い師をやっている。上記の通り未来が分かるので、よく当たると評判。占いをしながら悪魔や魔女や召喚師に関わることに首を突っ込んだり突っ込まなかったり。
遥(はるか)
外見三十代の男。目つきが鋭い。それなりに整っている。どちらかと言えば肉食獣系。と言いつつ悪魔なので外見は自分である程度は決定、変化させられそう。
詳しくは決めていない。蓮と契約した悪魔。そこそこ強い。名前は便宜上適当に決めただけ。蓮に「ハルさん」と呼ばれている。ソロモン72柱からとってこようと考えているが未決定。
基本的には契約主の蓮の命令に従う。だが元々の性格に自由奔放というか自分勝手な部分があるので、小さなわがままは多い。とはいえ仲は良いので愛想を尽かしたり離れたりすることはない。現状で満足しているタイプ。
外見は普通の人間と変わりがないので、気付けば蓮にパシリにされている。夕食の材料買ってこいだとか、食器洗えだとか、ゴミ出してこいだとか。気付けばそれに慣れている自分は本当に悪魔なんだろうかと若干アイデンティティの危機。でもデザートに釣られてまあいっか、となる。そしてわがままを言う。
黒い犬
黒い耳の尖った大型犬。蓮と契約した悪魔。少しだけ外見を変えて犬のふりをしている。
人の言葉を喋ることはないが、人の言っていることは理解している。契約者である蓮や同じ悪魔の遥とは軽い意思疎通が出来る。ただし蓮とは額をくっつけるとか、そういうことをしなければ無理。
蓮が最初に契約を交わした悪魔でもある。
?
蓮が契約を交わした悪魔。蓮が未来予知出来る原因でもある。まだ詳しくは設定を決めていない。
老若男女ありとあらゆる外見になることが出来る。
・現代、日本に住んでいる人達の話。
・魔女は魔法を使える、いわゆる典型的な魔女。
・悪魔が存在する。
・魔女は悪魔と契約出来るが、悪魔を使役することには長けていない。
・悪魔を使役することを中心とするのは召喚師。複数の悪魔と契約し、使役する。
・魔法=魔女、悪魔の使役=召喚師といった感じ。
・魔女も召喚師も場合によっては不老だったりする。そして世界中にいる。どちらもその才能がなければなることは出来ない。若干仲が悪い。
・魔女は総称で、男でも女でも魔女。召喚師も同様。
・蓮の言う未来は今その時点で必ず起こること。だが、それを知った上で未来を変えようという意志を持って行動すれば変えることが出来る。
蓮
魔女であり召喚師。どちらの才能も持っていて、どちらも均等に伸ばすことが出来た珍しい人。魔女は基本的に魔女のコミュニティで修行するが、それをしていない。そのため魔女との繋がりや意識が希薄。また、魔女として必須の能力が一部無かったりするがそれも修行を受けていないため。自分からそのコミュニティに行こうとは考えていない。
母親が魔女だったが生まれてすぐ捨てられ別の人に拾われた。拾われた人が魔女と召喚師どちらの知識も持っていたことから両方の美味しいところ取りが出来た。父親が召喚師だったが、蓮自身は両親のことなど一切知らない。
そういう過去があってか親がいる感覚というのがよく分からない。家族というまとまりに対してひどく冷めている。幼い頃はそれなりに憧れたかもしれないが、切望するほどではなかった。そう言う点では普通の人間らしくない。
大体20歳くらい。髪は腰くらいまでで、一つにまとめているイメージ。髪には魔力が集まりやすいので髪の手入れはきちんとしている。スレンダー。基本的には敬語。契約した悪魔の能力の影響で、未来予知が出来る。小さい頃からいろんな知識を詰め込んできたので記憶力が良い。
大学に行っていそうだが、普通大学ではなく芸術系になりそう。音楽系。ピアノや声楽に通じていそう。
副業というか本業というか、週三日くらいで占い師をやっている。上記の通り未来が分かるので、よく当たると評判。占いをしながら悪魔や魔女や召喚師に関わることに首を突っ込んだり突っ込まなかったり。
遥(はるか)
外見三十代の男。目つきが鋭い。それなりに整っている。どちらかと言えば肉食獣系。と言いつつ悪魔なので外見は自分である程度は決定、変化させられそう。
詳しくは決めていない。蓮と契約した悪魔。そこそこ強い。名前は便宜上適当に決めただけ。蓮に「ハルさん」と呼ばれている。ソロモン72柱からとってこようと考えているが未決定。
基本的には契約主の蓮の命令に従う。だが元々の性格に自由奔放というか自分勝手な部分があるので、小さなわがままは多い。とはいえ仲は良いので愛想を尽かしたり離れたりすることはない。現状で満足しているタイプ。
外見は普通の人間と変わりがないので、気付けば蓮にパシリにされている。夕食の材料買ってこいだとか、食器洗えだとか、ゴミ出してこいだとか。気付けばそれに慣れている自分は本当に悪魔なんだろうかと若干アイデンティティの危機。でもデザートに釣られてまあいっか、となる。そしてわがままを言う。
黒い犬
黒い耳の尖った大型犬。蓮と契約した悪魔。少しだけ外見を変えて犬のふりをしている。
人の言葉を喋ることはないが、人の言っていることは理解している。契約者である蓮や同じ悪魔の遥とは軽い意思疎通が出来る。ただし蓮とは額をくっつけるとか、そういうことをしなければ無理。
蓮が最初に契約を交わした悪魔でもある。
?
蓮が契約を交わした悪魔。蓮が未来予知出来る原因でもある。まだ詳しくは設定を決めていない。
老若男女ありとあらゆる外見になることが出来る。
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ダンタリアンはかく語りきを一つの話として書きたい。
・何故少年は本を売るのではなく引き取ってもらおうとしたのか
→売りたくなかったから。それで金を得ようとは思わなかったから。
だとすれば二つ理由が出来る。
1一刻も早く手放したい、そんなもので出来た金を受け取りたくない、つまり本に対して悪い感情を抱いている
2売るのではなく手放さなくてはならない事情がある、考えられるのは、蔵書印が芥川書房の物で、それについて勘違いした
この場合2では面白くないので、1で考える。
・何故少年は早く手放したい、本に対して悪い感情しか抱いていないのか
→本の内容、または本にまつわるエピソードが問題。そうなると本のタイトルと内容が問題になる。
1谷崎潤一郎『刺青』または『春琴抄』、耽美系
2芥川龍之介『地獄変』、画家の話
3尾崎紅葉『金色夜叉』、男の女への復讐劇、未完、ただし韓国では翻訳され、完結している
書きやすいのは2『地獄変』か。だとすると芥川書房の名前を変えるべきか。これだと主要二人の名前が全然違う物になって意味ないね!!!!まあいいや
・少年は『地獄変』にまつわるエピソードがあるが、どんなことを経験すれば本を手放すか
まず、手放す理由の一つに売ってる暇はない、と考えることも出来る。そもそも少年の頭の中に売るという発想がない、あるいはとんでもなく焦って売るより何より手放すことを優先した、ということもある。
もしくは、もともと書房にあった本を盗んできたのだと勘違いして慌てて戻しに来た、という手がある。こちらが良いか。
ではなぜ、盗んできたと勘違いしたのか。少年には弟が居て、彼がこの本を読んでいて、あとでこっそり見たら書房の名前の印が押されていた。それは書房が売っている本に押す印であるが、少年はそれを知らず弟が盗んできたのだと勘違いして慌てて戻しに来た。でもそれだと「引き取って下さい」という台詞がおかしい。「お返しします」にするべきか? でも引き取って下さいの方が好きだ。
それは良いとして。
あるいはそんなことまったく関係なく、本当に、本に嫌悪を抱いていたのかもしれない。どうすれば嫌悪するか。
『地獄変』の話の流れを考える。地獄絵図を描きたい画家は最終的に、自分の娘が焼け死んでいくところを見て完成させる。これと同じようなことを少年と少年に関係のある人間にさせる。
山崎で考えて良いかもしれない。
山崎の弟=少年。兄が『地獄変』を読んで何かを言う。弟、読む。はっきりと理解する。あっやばい兄貴からこの本遠ざけなきゃ駄目だ、じゃないとこの人、絵を描くためだけになにかする。
これならいけるかもしれない。ちょっとこの方向性で考えてみる。書いたら今までで一番長い話になりそう。
・何故少年は本を売るのではなく引き取ってもらおうとしたのか
→売りたくなかったから。それで金を得ようとは思わなかったから。
だとすれば二つ理由が出来る。
1一刻も早く手放したい、そんなもので出来た金を受け取りたくない、つまり本に対して悪い感情を抱いている
2売るのではなく手放さなくてはならない事情がある、考えられるのは、蔵書印が芥川書房の物で、それについて勘違いした
この場合2では面白くないので、1で考える。
・何故少年は早く手放したい、本に対して悪い感情しか抱いていないのか
→本の内容、または本にまつわるエピソードが問題。そうなると本のタイトルと内容が問題になる。
1谷崎潤一郎『刺青』または『春琴抄』、耽美系
2芥川龍之介『地獄変』、画家の話
3尾崎紅葉『金色夜叉』、男の女への復讐劇、未完、ただし韓国では翻訳され、完結している
書きやすいのは2『地獄変』か。だとすると芥川書房の名前を変えるべきか。これだと主要二人の名前が全然違う物になって意味ないね!!!!まあいいや
・少年は『地獄変』にまつわるエピソードがあるが、どんなことを経験すれば本を手放すか
まず、手放す理由の一つに売ってる暇はない、と考えることも出来る。そもそも少年の頭の中に売るという発想がない、あるいはとんでもなく焦って売るより何より手放すことを優先した、ということもある。
もしくは、もともと書房にあった本を盗んできたのだと勘違いして慌てて戻しに来た、という手がある。こちらが良いか。
ではなぜ、盗んできたと勘違いしたのか。少年には弟が居て、彼がこの本を読んでいて、あとでこっそり見たら書房の名前の印が押されていた。それは書房が売っている本に押す印であるが、少年はそれを知らず弟が盗んできたのだと勘違いして慌てて戻しに来た。でもそれだと「引き取って下さい」という台詞がおかしい。「お返しします」にするべきか? でも引き取って下さいの方が好きだ。
それは良いとして。
あるいはそんなことまったく関係なく、本当に、本に嫌悪を抱いていたのかもしれない。どうすれば嫌悪するか。
『地獄変』の話の流れを考える。地獄絵図を描きたい画家は最終的に、自分の娘が焼け死んでいくところを見て完成させる。これと同じようなことを少年と少年に関係のある人間にさせる。
山崎で考えて良いかもしれない。
山崎の弟=少年。兄が『地獄変』を読んで何かを言う。弟、読む。はっきりと理解する。あっやばい兄貴からこの本遠ざけなきゃ駄目だ、じゃないとこの人、絵を描くためだけになにかする。
これならいけるかもしれない。ちょっとこの方向性で考えてみる。書いたら今までで一番長い話になりそう。
「あの」
三冊百円のカートを店先に出す。日差しが直接当たらないよう、ひさしの下に慎重に押し込んだ。開店して間もないが、既に太陽は高く、肌には夏の空気が絡みついてくる。カートを動かしただけだというのに、背中に汗が噴き出しているのが分かった。
直江はかけられた声に振り向いた。直江の働く古書店にやってくる客は性別も職業も年齢層も様々だが、声はだいぶ若いように聞こえた。高校生くらいだろうか、と想像したとおり、直江の後ろに白いシャツにレジメンタルタイを締めた少年が緊張した面もちで立っていた。短い黒髪にスクエアフレームの眼鏡をかけたまじめそうな少年だ。制服からして近くの高校の生徒だろう彼は紙袋を手にしていた。ほどよく日の焼けた頬に汗がつう、と滑り落ちたのが見えた。
少年は躊躇うように唇をかすかに動かした。
「あの、店員さんですよね」
「あ、ええ、はい、そうですけど」
自分の頬にも同じように汗が流れたことに気づき、直江は手の甲でそれを拭う。わずかに声が裏返った直江を少年はじっと見ていた。居心地の悪さを感じて、手を無意味に開閉する。何か用事でもあるのか、と尋ねる前に、少年は緊張をちらつかせたまま、
「これ、引き取ってください」
と、手にしていた紙袋を押しつけるように差しだし、ぱっと手を放してしまった。受け取る準備もなにもしていなかった直江の目の前で、紙袋が落ちる。アスファルトに重い音を立てて落ちた袋の口から、古びた本がこぼれるように出てきた。
慌てて屈み紙袋を取り上げる。袋はわずかに汚れただけで破けてはおらず、本も奇跡的に無事だった。地面と接した表紙は擦れておらず、落ちた衝撃で角は歪んでいない。そのことにほっとしつつ本を紙袋の中に戻した。熱されたアスファルトは熱く、屈み込んだだけで体感温度がぐっと上がった。落ちた本や紙袋が燃えてしまいそうな、そんな錯覚さえ抱く。
「ちょっと!」
いきなりなにをするんだ、と顔を上げたが、そこには既に、少年の姿はなかった。咎める声はどこにも届かず、ただ午前十時半の通りに響く。少年は走り去ったのか、目の前を通る道を見渡しても、どこにもその影はなかった。唖然とした直江の後ろで、店のドアが開いた音がした。
「直江さん?」
店主の芥川が怪訝そうな顔で、立ち尽くす直江に声をかけてきた。
三冊百円のカートを店先に出す。日差しが直接当たらないよう、ひさしの下に慎重に押し込んだ。開店して間もないが、既に太陽は高く、肌には夏の空気が絡みついてくる。カートを動かしただけだというのに、背中に汗が噴き出しているのが分かった。
直江はかけられた声に振り向いた。直江の働く古書店にやってくる客は性別も職業も年齢層も様々だが、声はだいぶ若いように聞こえた。高校生くらいだろうか、と想像したとおり、直江の後ろに白いシャツにレジメンタルタイを締めた少年が緊張した面もちで立っていた。短い黒髪にスクエアフレームの眼鏡をかけたまじめそうな少年だ。制服からして近くの高校の生徒だろう彼は紙袋を手にしていた。ほどよく日の焼けた頬に汗がつう、と滑り落ちたのが見えた。
少年は躊躇うように唇をかすかに動かした。
「あの、店員さんですよね」
「あ、ええ、はい、そうですけど」
自分の頬にも同じように汗が流れたことに気づき、直江は手の甲でそれを拭う。わずかに声が裏返った直江を少年はじっと見ていた。居心地の悪さを感じて、手を無意味に開閉する。何か用事でもあるのか、と尋ねる前に、少年は緊張をちらつかせたまま、
「これ、引き取ってください」
と、手にしていた紙袋を押しつけるように差しだし、ぱっと手を放してしまった。受け取る準備もなにもしていなかった直江の目の前で、紙袋が落ちる。アスファルトに重い音を立てて落ちた袋の口から、古びた本がこぼれるように出てきた。
慌てて屈み紙袋を取り上げる。袋はわずかに汚れただけで破けてはおらず、本も奇跡的に無事だった。地面と接した表紙は擦れておらず、落ちた衝撃で角は歪んでいない。そのことにほっとしつつ本を紙袋の中に戻した。熱されたアスファルトは熱く、屈み込んだだけで体感温度がぐっと上がった。落ちた本や紙袋が燃えてしまいそうな、そんな錯覚さえ抱く。
「ちょっと!」
いきなりなにをするんだ、と顔を上げたが、そこには既に、少年の姿はなかった。咎める声はどこにも届かず、ただ午前十時半の通りに響く。少年は走り去ったのか、目の前を通る道を見渡しても、どこにもその影はなかった。唖然とした直江の後ろで、店のドアが開いた音がした。
「直江さん?」
店主の芥川が怪訝そうな顔で、立ち尽くす直江に声をかけてきた。
アスファルトに身を投げ出して横たわる人を見たことがある。住宅街の車通りの少ない、それでも人が幾人か通る道でだ。冬には珍しくもない、大粒の軽い雪がちらちら降る、灰色の空の日だった。
その人は黒い服を着ていた。その頃はまだ幼く理解していなかったが、おそらく彼が着ていたのは喪服だったのだろう。ただ何も知らない幼いレンは、真っ黒い、という印象だけを持った。真っ黒な男は何をする出もなく両手を広げ、口を軽く開け、ぼんやりと空を見ていた。
彼はだんだんと、白い雪に覆われていった。
「ねえ、おじさん」
危ないよ、寒くないの。そう声をかけたはずだ。男は最初何も反応しなかった。もしかして死んでいるのか、ぞっとしたレンはもう一度、ねえ、と強く声を発した。そこでようやく男の口が開閉した。空中を見つめていた目がきょろりと動き、服と同じように黒い目がレンを見た。
「……やあ」
答えた男の声は掠れていたが、悪意やレンへの害意はなかった。身を投げ出したままの男は目だけを動かしレンを見た。
「ねえ、大丈夫?」
動く気配のない彼に、レンは焦っていたのだろうか。車通りがないとは言え来ない訳ではない。人も通る。レンから見ても道の真ん中に人が転がっているのはおかしなことだ。だというのに男は一切動く気配を見せなかった。
男は笑った。
「心配してくれているのかな」
「うん、そうだよ」
素直にうなずくと、男は更に笑みを深めた。
「ありがとう。でも大丈夫だ」
「ほんとうに?」
「本当に。慣れていなくて、少し、落ちてしまっただけだから」
落ちてしまった、という男は、そこでようやく手を動かした。右手が持ち上がり、顔に当たってきた雪を億劫そうに払う。冷えているのだろうか、手は青白かった。
「落ちてきたの?」
「そう、落ちてきたんだ」
「どこから?」
男は何も言わず、ただ笑みを浮かべて右手の人差し指を上に向けた。レンは指し示した方を見上げる。重い灰色の空がそこには広がり、同じように雪が舞っていた。
空を指した男は笑っていた。
「天国からきたのね」
やはり男は何も言わなかった。
その人は黒い服を着ていた。その頃はまだ幼く理解していなかったが、おそらく彼が着ていたのは喪服だったのだろう。ただ何も知らない幼いレンは、真っ黒い、という印象だけを持った。真っ黒な男は何をする出もなく両手を広げ、口を軽く開け、ぼんやりと空を見ていた。
彼はだんだんと、白い雪に覆われていった。
「ねえ、おじさん」
危ないよ、寒くないの。そう声をかけたはずだ。男は最初何も反応しなかった。もしかして死んでいるのか、ぞっとしたレンはもう一度、ねえ、と強く声を発した。そこでようやく男の口が開閉した。空中を見つめていた目がきょろりと動き、服と同じように黒い目がレンを見た。
「……やあ」
答えた男の声は掠れていたが、悪意やレンへの害意はなかった。身を投げ出したままの男は目だけを動かしレンを見た。
「ねえ、大丈夫?」
動く気配のない彼に、レンは焦っていたのだろうか。車通りがないとは言え来ない訳ではない。人も通る。レンから見ても道の真ん中に人が転がっているのはおかしなことだ。だというのに男は一切動く気配を見せなかった。
男は笑った。
「心配してくれているのかな」
「うん、そうだよ」
素直にうなずくと、男は更に笑みを深めた。
「ありがとう。でも大丈夫だ」
「ほんとうに?」
「本当に。慣れていなくて、少し、落ちてしまっただけだから」
落ちてしまった、という男は、そこでようやく手を動かした。右手が持ち上がり、顔に当たってきた雪を億劫そうに払う。冷えているのだろうか、手は青白かった。
「落ちてきたの?」
「そう、落ちてきたんだ」
「どこから?」
男は何も言わず、ただ笑みを浮かべて右手の人差し指を上に向けた。レンは指し示した方を見上げる。重い灰色の空がそこには広がり、同じように雪が舞っていた。
空を指した男は笑っていた。
「天国からきたのね」
やはり男は何も言わなかった。
レンが帰宅すると、真っ黒な獣が足下にすり寄ってきた。犬とも狼ともつかない、黒い毛並みの獣は大きい。うっかり押し倒されそうになりながらなんとかバランスをとりつつ、レンは靴を脱いだ。
「ただいま」
ふんふんと匂いを嗅いでいるのは、今日は貧血検査で血を抜かれたからだろうか。獣は艶やかな瞳でレンを見上げている。視線はおそらく、小さな傷のついた耳たぶへいっているのだろう。獣の頭をぐいぐいと撫でる。不機嫌そうに獣が鼻を鳴らした。
「オイ、俺は犬じゃない」
「知ってますよ」
その割に動作は犬ですけどね、と言いながら廊下を歩いていると、後ろから軽く体当たりされた。その拍子に壁に鞄が当たって鈍い音を立てる。レンは何かを叩く音が嫌いだ。獣を睨むと目を逸らされた。
鞄は部屋に放り込み、着ていたブレザーもベッドに投げつける。皺になるぞ、と獣が言ったが無視した。その獣はずっとレンの後ろをついてくる。手を洗うために洗面所に行けばその前で待ち、何か飲もうとキッチンに入れば横にちょこんと腰掛けている。図体が大きく口の悪い割に、どうにもこの獣はレンにべったりらしい。
「ただいま」
ふんふんと匂いを嗅いでいるのは、今日は貧血検査で血を抜かれたからだろうか。獣は艶やかな瞳でレンを見上げている。視線はおそらく、小さな傷のついた耳たぶへいっているのだろう。獣の頭をぐいぐいと撫でる。不機嫌そうに獣が鼻を鳴らした。
「オイ、俺は犬じゃない」
「知ってますよ」
その割に動作は犬ですけどね、と言いながら廊下を歩いていると、後ろから軽く体当たりされた。その拍子に壁に鞄が当たって鈍い音を立てる。レンは何かを叩く音が嫌いだ。獣を睨むと目を逸らされた。
鞄は部屋に放り込み、着ていたブレザーもベッドに投げつける。皺になるぞ、と獣が言ったが無視した。その獣はずっとレンの後ろをついてくる。手を洗うために洗面所に行けばその前で待ち、何か飲もうとキッチンに入れば横にちょこんと腰掛けている。図体が大きく口の悪い割に、どうにもこの獣はレンにべったりらしい。