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Bernadette
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遠野イツキ…警視庁異能研究課、異能者、髪は黒、目は赤紫、風を操る異能、最近所属した

トオノ・イツキ。28歳、男。身長は高め(175~185)。シャツにスラックス、革靴、白衣着用。ネクタイはつけたりつけなかったり。首から身分証明カードをケースに入れてぶらさげている。
少し癖のあるショートカット。目つきはあまり良くない。視力が良いので裸眼だが、最近パソコンに向かうと目が疲れるので、眼鏡の導入を考えている。
一人称は「俺」、公的な場では「私」。上司には丁寧語、同年代、下には丁寧語は使わない。二人称は「おまえ」「君」「あなた」。口調は乱暴ではないが丁寧でもない。「~だろう」「~じゃないか」「~だったか」など。
ショートスリーパー。毎日三、四時間眠れれば十分。味覚は、食べられればとりあえず何でも良い。大学入学からずっと一人暮らしをしているが、一向に料理の腕が上達しないので、家で食事を摂る時は冷食やコンビニ弁当。大学時代の癖で、ビーカーに飲み物を入れて飲むことに躊躇いがない。
ひとつのことに熱中すると時間を忘れる。今は研究のために朝から晩まで研究室に篭もりきりになることもしばしば。しかもちょっとやそっとのことでは気が逸れないので、地震程度では反応しない。話しかけても無視されるか上の空な返事がされる。
熱中する物は何でも。ただし最近は研究所に詰めっぱなしのため、研究以外の何かに打ち込むことはあまりない。昔はやりこみ系RPGで三徹くらいしていた。
暇であることが苦痛。何かしていなければ落ち着かない。なので手癖が悪く、ペンを持てばペンを回し、要らない紙があればペーパーアートを始める。風の異能は紙飛行機をより遠くまで飛ばすことに使われる。

原因究明のためには研究は必須であり、そこから得られる物が何らかの形で技術や文明の進歩に繋がると考えている。進歩のためなら多少の犠牲は仕方ない。故に異能研の非人道的な実験などにもそれほど嫌悪感は抱いていない。とはいえ新入りかつ化学なので、法医学や心理学ほど異能者との接触はない。
異能者のことは「異能者」と呼び、嫌悪感も同情も何も抱いていない。自分自身も異能者だが、同じ異能者を研究材料とすることも厭わない。自分達のような異能持ち研究者とその他の異能者を無意識に区別して考えている。故に、自分も研究対象になるかもしれない可能性を、やはり無意識に排除している。その辺りは非常に都合の良い思考回路をしている。
現在、異能者の間で広まっている発狂を抑える薬の分析などを行っている。そこから実際に発狂を抑える薬を生み出すことは出来ないか、という研究も行っているが、全然進歩がない。

人と関わることは嫌いではないが、分析中など集中している時に話しかけられるとわざと無視する傾向がある。さすがに上司に声を掛けられると反応するが、声を掛けられてから反応するまで10~60秒のブランクがある。自分の集中を邪魔されるのは好きでは無い。とはいえさすがに研究所なので、研究中に話しかけられることもあまりないと思われる。
人に誘われれば食事や飲み会に参加するものの、自分から相手に言い出すことはあまりない。受動的。

風を操る異能の純血。異能に目覚めたのは一年ほど前(27歳くらい?)覚醒に対して悩むよりも、研究所での研究が急がしくてあまり自分の異能と向き合っていない。それが上記の異能者に対する線引きに関係している。
まだまだ発狂はしていない。能力はそれとなく使っている。紙飛行機を投げる時とか。現時点では風の流れを操る程度しか出来ない。のちのちそれを利用して、移動力の向上に生かせるくらいにはなるのでは。

化学分野鑑定担当。大学(化学系)→大学院→大学の研究所に所属する→異能研への引き抜き→異能研に。まだまだ新入り。
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百合川明…保守派、異能者、髪が黒、目が桃色、光を操る、血の形状を変化させる異能、劣等感を感じている

牧野優世…保守派、未覚醒者、髪が水色、目が青緑、身体能力向上と重力を操る異能、疎ましく思っている

世御坂琴樹…無所属、異能者、髪は黒、目は緑、影を自在に操る異能、力が暴走する傾向にある

月山朱里…警視庁異能捜査課、覚醒したばかりの異能者、髪は亜麻色、目は紫、念動力、なんとなく所属している

月山凪…過激派、異能者、髪は赤、目は金色、血の形状を変化させる異能、思想に疑問を抱いている

如月…警視庁異能研究課、異能者、髪は亜麻色、目は灰色、重力を操る異能と傷を癒す異能、劣等感を感じている

サクラ…中立派、異能者、髪は黒、目は赤、空間移動と重力を操る異能、力が暴走する傾向にある

ヒロ…警視庁異能研究課で他派閥からの潜入者、異能者、髪は青緑、目は青紫、空間移動と音を操る、異能を隠している

遠野イツキ…警視庁異能研究課、異能者、髪は黒、目は赤紫、風を操る異能、最近所属した

羽根川メイ…保守派、異能者、髪は茶色、目は桃色、念動力を操る異能、立場に不安を感じている

ミズキは「来世」「犬」「ゆがんだ魔法」を使って創作するんだ!ジャンルは「学園モノ」だよ!頑張ってね! http://shindanmaker.com/58531


「おれには、双子の妹がいるんですけど」

 湿布を交換してもらおうと、保健室を訪れたのは放課後だった。口煩い保健医と顔を合わせるのは面倒だったが、わざわざ自分で湿布を買うのも馬鹿らしく、どうせならタダで交換しようと思ってのことだった。保健医の小言は適当に受け流しておけば良い。なぜ怪我をしたのか聞かれることはわかりきっていたから、すらすらと受け答えできるように頭の中でシミュレーションをした。いわく「寝起きにベッドから落ちて思いきり打ったんです」「あらそうなの、大変ねえ」。実際そんな風に、うまくいくとも思えなかったが。
 ところが保健室にいたのはやかましい保健医ではなく、死んだ目をしたクラスメイトだったのだから、俺のシミュレーションはまったく無意味なものに終わった。
 普通の教室より一回り狭いくらいの保健室は、入り口近くに大きなテーブルが置かれて窓際に保健医用のデスクがある。奥のベッドはどれもカーテンが開けられて、誰も寝ていないことは明らかだった。クラスメイトは大きなテーブルとセットで置かれたパイプ椅子に深く腰掛けていた。入ってきた俺を一瞥し、やっぱり死んだ目のまま「絆創膏ですか、湿布ですか」と言ってきたので、湿布とだけ答えた。勝手知ったる様子で棚をあさり始めたクラスメイトと入れ替わるように、自分の分のパイプ椅子を引っ張ってきて座る。ちょうどクラスメイトとは斜めになるような具合だった。
 クラスメイトの手際は悪くない。差し出した右腕に広がった青痣に、さして表情を変えることはなかった。ちょうど良いサイズの湿布を探し、フィルムを剥がして遠慮なく痣を覆う。湿布の冷たさは突き刺すようで、同時に感覚が麻痺していくようでもあった。

「おれには、双子の妹がいるんですけど」

 剥がしたフィルムを丁寧にテーブルに置き、少し離れたところにあったゴミ箱を引きずって近づけた。視線を向けると、話している人間とは思えないほど無関心そうな顔をした男子生徒の顔があった。なんて顔だと笑いたくなったが、あいにくここは笑うところじゃないんだろう。頬が引きつって痛かった。
 俺の視線から逃げるように、長い睫毛を震わせて目が伏せられた。それでもきっとあの目は死んだ魚のように淀んでいるのだろう。容易に予想できたけれど俺も人のことは言えないに違いない。

「ねえ知ってます。江戸時代って不思議な慣習があったんです。男女の双子が生まれたら、それは前世で心中した恋人達が生まれ変わった子供なんだって。だから、今度こそ結ばれるように、その子達を別々に育てて大きくなったら結婚させたんだそうです」

 ふ、と笑う気配がした。救急箱を一度棚に戻すため、クラスメイトは立ち上がる。その背をなんとはなしに目で追って、けれどすぐに興味をなくしてかすかに揺れるカーテンに視線を移した。窓はすべて締まっているのに風が吹いているのはエアコンがついているからだと、そこでようやく気付いた。

「じゃあ、お前は前世で心中したのか。今の妹と」
「だったらどうします。おれと妹は、来世の幸福を願って心中したんだとしたら」

 おれは、いもうとをあいしてやるべきなんですかねえ。そこで初めて見たクラスメイトの笑みは何かを嘲るそれによく似ていた。何を馬鹿にしていたんだろうか。俺だろうか。それとも妹だろうか。あるいは世間的な何かすべてだろうか。他人の俺にはよく分からず、見えにくい目を指先でこすって無言を貫く。その拍子に眼帯がずれて、緩慢な動作で付け直した。

「でもどうせ、お前の妹はお前のことが好きなんだろう。兄としてじゃなくて」
「男として」
「一般常識と法律が泣くぜ」
「おれが泣きたいです」
「悪いな、胸もハンカチも貸してやれない」
「ハンカチは自分で持ってるので大丈夫ですよ」

 またパイプ椅子に腰かけた、クラスメイトが持っていたのはテーピングテープだった。どうやらそれで、湿布を固定してくれるらしかった。

「でももし、そんなくだらないことが本当だったら。おれと妹が本当に、そういう前世だったら。どうしましょうね。困りますね」

 そしてまた他人事のようにクラスメイトは吐き捨てるのだ。

「おれはあなたになりたかった」

 それだって十分くだらないことだ、と反論しようとして、する気が失せた。
 クラスメイトは足掻いているのだろう。同時に受け入れようともしているのだろう。江戸時代の話だってそうだ。今は江戸時代じゃないしそんな話なんてあり得ない。そんなくだらないことに、けれどクラスメイトは縋っているのだろう。そうでもなければやっていけないことは世の中たくさんある。
 だからといって俺のようになりたいのは悪趣味としか言いようがないのだが。

「テーピングテープで留めますけど。ついでに頬のガーゼも交換しておきましょうか」
「いや、別に良いよ。めんどくせえし。やりだしたらキリがない」

 棚にはまったガラス戸に映った自分と目があった。笑おうとして笑えなかった頬にはガーゼが、片目には眼帯が、首には包帯が、まるで冗談のように俺の姿を覆い隠している。
 どうにも、クラスメイトと俺は何かを間違えてしまったらしい。間違えてしまったのが俺達自身かどうかはわからないがともかく。きっと、クラスメイトが妹から向けられる愛情の半分でも、俺の親から俺に向けてのそれに分け与えることができたなら、お互いこんな死んだ目をしていることもなかったろうに。どうしてこうも、世の中は上手くいかずに歪んでしまうのだろう。もしも魔法使いがいるのなら、このボタンを大幅に掛け間違えたような状態をなんとかして欲しいくらいだ。
 だが現実にそんなものはいないし、きっと俺もクラスメイトもこのまま生きていくのだろう。収まったはずの痛みがまた戻ってくる。ますます俺は無言になり、目の前が暗く沈んでいく。

「もし来世というものがあったら」
「あったら?」
「人間以外になりたいですね」
「そうかい」
「無駄に頭があるからいけないんですよ。考えてしまうから。だからきっと」
「でもどうせ、来世なんて信じてないんだろう?」

 あたりまえじゃないですか、とクラスメイトは朗らかに笑った。濁った色の目を隠すような満面の笑みに俺も笑おうとして、でもやっぱり頬が痛くてやめた。どうせなら次は笑う必要のない生物に生まれ変わりたいと思ったが、どうせ死んだところで来世はないので、やはり無駄なことなのだろう。結局俺は表情を変えないまま、新しく貼られた湿布を指先で撫でた。
ねーmzk_mik、人生に疲れたなんでも屋とその人を嫌う人物とのファンタジー書いてー。



 タキに接する上で禁じられていることは三つある。
 一つ。彼を無理に起こさないこと。
 一つ。彼にむやみに触れないこと。
 一つ。彼の過去を詮索しないこと。

 ルカが朝の六時に起きて夜の十二時に寝るという正確な生活リズムを刻んでいるのとは裏腹に、彼女の雇い主であるタキの生活は不規則だ。故に彼と彼女が顔を合わせて食事を摂るということは滅多にない。
 そもそも、彼に雇われた世話係と言う名のメイドであるルカが、主人と共に食事を摂ること自体、ありえないことではあるのだが。
 それが、どう間違ったか、今彼女の目の前に並んでいるのは湯気の上がる温かなスープと焼きたてのパンにストロベリージャム、新鮮な野菜のサラダ、柔らかなスクランブルエッグの皿だった。そして全く同じ物がテーブルの対面にも並び、そこには銀色の髪の毛を寝癖で乱した主人が座っていた。
 躊躇いつつも椅子を引いて座れば、タキは無言のままルカを見、そしてフォークを手に取った。つられてルカもフォークを持ち、彼がスクランブルエッグを掬ったのを見届けてからそっとトマトを突き刺した。瑞々しいトマトの赤い皮が破れ、中の液体がいくらか溢れる。口に放り込み咀嚼を始めたところで、これは主人に合わせて食事を終わらせるべきか、それとも早めに食べ終わるべきか、考えを巡らせていた。
 勿論タキは一切そんなことは考えていないだろう。そもそも考える側ではないのだから仕方ない。ぬ、と手が差し出された。
「……はい?」
「ジャム」
「イチゴですが」
「……」
「……どうぞ」
 会話が上手く続かないのはいつものことだ。差し出された手にそっとジャムを載せた拍子に、手のひらに指が当たった。むやみに触れてはいけない、という言葉を思い出したが、これは不可抗力だろう、と誰にともなく言い訳をした。タキは蓋を開け、ストロベリージャムをパンに塗りたくっていた。
 その塗り方が妙に子供のようだったが、しかし彼はどこからどう見ても立派な大人だ。ライムグリーンの鮮やかな目が細くなる。一体どうしたのか、フォークにレタスを刺したまま見返すとふい、と視線を逸らされた。逸らされた、というよりは、壁に掛かったカレンダーに視線を移した、と言った方が正しいだろう。ぺろりと彼の舌が唇の端を嘗めた。やはり、どこか子供のような仕草だった。
 カレンダーには数日前から書き込まれた予定が並んでいた。赤いペンで書かれたことには、「魔女、来る」の一言だけだ。それでタキが分かっているのならばルカに問題はない。だがそれで済まないのだからこの仕事は憂鬱だ。
「茶の用意」
「はい。紅茶でよろしいですか」
「なんでも良いんじゃねえの」
 それでは困るのだ、という言葉を飲み込み、代わりにスープをひとすくい、口にする。
「どうせ知り合いだ。何を出しても文句は言わないだろうよ」
「……かしこまりました」
 一つ。彼の過去を詮索しないこと。頭の中で約束がぐるぐると回っている。詮索したいとは思わないが、もしも出来たならば会話がもっと続くのだろうか、と考えた。例えば、「魔女とは何年ほどの付き合いなのですか」などと聞くことが出来れば。しかしそれは詮索の類に入ってしまうのだろう、とルカはやはり、口を閉じるしかない。
 では朝食を終えたら準備をしよう、と動かす手を早めた瞬間だった。
「おい、伏せろ」
「え」
 目を丸くしたルカへ主人が鼻を鳴らす。慌てて首をかくん、と下げた、その頭上をひゅん、と何かが飛んでいった音がした。一気に背筋が凍った。よっぽど振り返りたかったが、しかしまだ頭を上げて良いとは許しが出ていなかった。おそるおそるタキを盗み見ると、彼の鮮やかな目がじっとルカの背後を見つめていた。
「こんにちは、便利屋さん。相変わらず辛気くさい顔をしていらっしゃるのね」
「朝から煩いヤツだな」
 聞き覚えのない女性の声に、タキはいつもと変わらない調子で答えた。そろそろ顔を上げても良いだろうかと少し頭を持ち上げたところで、また頭上を嫌な音が走っていった。
「フォークにスプーンに、ずいぶんと手癖の悪いこと」
「まあな。嫌ならさっさと回れ右。帰れ」
「嫌な人。だから嫌いなのよ」
「安心しろ、俺も大嫌いだ」
「さっさと死んでしまったらよろしいのに」
「それが出来れば苦労していない」
 頭上で交わされる会話に冷や汗をかきながら、ルカはただ顔を伏せていた。冷め始めた朝食を目の前に殺気だった言葉が延々と投げては投げ返され、間に挟まれたルカはひどくいたたまれない気分だった。タキの手が手持ち無沙汰に揺れている。持っていたフォークもナイフも、女性に向けて投げてしまったが故にそこにはない。次に狙われるのはストロベリージャムの瓶だろうかと思い至り、目の前が眩んだ。掃除や片付けをするメイドの身にもなって欲しい。
「で、わざわざ大嫌いななんでも屋のところにやってきた用件はなんだ。さっさとしろ。さっさとしないと」
 するりと彼の手が伸びたのは、予想通りストロベリージャムの瓶だった。
 喧嘩だったらよそでやれ、という言葉を、やはりルカは飲み込んだ。

加藤瑞樹の書く小説のお題は、『お花見』『美少女』『虚構世界』です。




 軽い音がして見上げれば、伸びた手が桜の枝を折り取っていた。その拍子に花びらがひとひら、音もなく落ちる。
 桜を折り取ったのは男の手だった。だが手の持ち主へ視線を動かした時には、そこにいるのは男ではなく、美しい容貌を持った少女へと変わっていた。目の前の朔をイメージしたのか、まったく同じ制服に、同じほどの身長に、同じほどの年齢の少女は、しかし、無表情に立っている。ある種まがまがしい気配を感じるのは間違いではない。
「……もったいない」
「何が?」
「桜」
「折ったのが?」
「どうして折ったの」
「なんとなく」
 かわいらしい声は平坦だった。姿と中身の差がひどく不愉快で、朔は静かに眉をひそめて抗議を表した。それを目の前にしても変わらないのがこの、美少女の姿をした「何か」だった。
「折るな、とは言われていない」
「そりゃ、言ってないけど。不文律みたいなもんだよ」
「不文律?」
 そこで初めて、美少女は表情を変えた。可憐な顔立ちに、鬱蒼とした笑みを浮かべて。
「まさかこんなところで、そんな物を持ち出すとは」
 こんなところ、と言われ、朔は周囲をぐるりと見渡した。傍に立った大きな桜の木が一本、そのほかは何もない。あとはただひたすら暗く、広い。
 そういえばそうだった、と朔はやはり無言のまま眉をひそめた。それを愉快気に、美少女は笑う。
「そういうことだ。気分はどうだ、朔」
「どうもこうも。とても不愉快」
「俺は愉快だ」
「黙ってろ悪魔」
「ばかだなあ、お前も」
 ぼう、と音を立てて枝が燃える。少女に手折られた桜の枝はあっという間に火に包まれ周囲を照らした。燃えた花びらがやはり、音もなく散った。
 朔はちらりと美少女を見やり、桜に背を向けた。
「その格好。似合わないからやめたら?」
「そうか」
 次に聞こえた声は可憐な響きのそれではなく、
「なら、そうしよう」
 低く、平坦な、男の声だった。
 目を閉じれば周囲の闇よりさらに深い、まぶたの裏の闇が迫ってくる。一本だけ咲いた桜が崩れる音がした。さして見もしなかった桜の木をもっと鑑賞しておけばよかった、と今更のように思う。
 季節外れの花見は終わり、一歩踏み外した世界は次の瞬間には終わっている。


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